北欧

夫婦別姓や結婚観にみるフィンランドの自主自立の精神 【現地在住の島塚絵里さんに聞く】 夫婦別姓や結婚観にみるフィンランドの自主自立の精神 【現地在住の島塚絵里さんに聞く】

庭仕事をする島塚絵里さん
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フィンランドで結婚し、子育てをしながらデザイナー、イラストレーターとして活躍する島塚絵里さん。今年で15年経つというフィンランドでの日常を綴った著書、『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』(パイ インターナショナル)の一部を3回にわたってご紹介。さらに島塚さんにお話を伺い、フィンランドの女性の生き方について探ります。2回目の今回は、夫婦別姓や社会的自立についてお話を伺いました。

目次
夫婦別姓や結婚観にみるフィンランドの自主自立の精神 【現地在住の島塚絵里さんに聞く】
  1. 自由に決められる苗字
  2. 高校を卒業したら誰もが自立できる、社会の仕組み
  3. \島塚さんに聞きました/ フィンランドの結婚観と自立の理由

自由に決められる苗字

夫の苗字はカッリオプスカ。カッリオは岩、プスカは原っぱ、つまり岩原さんです。日本の苗字と同じように、フィンランドの多くの苗字は自然や動物に由来します。

結婚しても旧姓のままを名乗る人も多く、中には奥さんの苗字に変えたり、ふたつの名前を–(ハイフン)でつなぐ場合もあり、かなり自由に選択できます。フィンランドの苗字に変えるのも、しっくりこなかったので、私たちは夫婦別姓を取ることにしました。子供の頃、うちは三姉妹だから、「いつか全員苗字が変わるのかあ」と寂しく思ったりもしましたが、たまたま全員が外国の人と結婚することになり、島塚の姓は無事(?)残ることになったのでした。

島塚さんファミリー

高校を卒業したら誰もが自立できる、社会の仕組み

フィンランドの子供たちは、だいたい高校を卒業すると家を出て、自立への道のりを歩み出します。進学と同時に、一人暮らし、またはルームシェアを始め、生活費も自分で稼ぐようになるのです。というのも、大学や専門学校に進学すると、月々Kela(労働省)から返済不要の生活費と住居手当が支給されます。これがあれば、親の仕送りも必要なく、週末や夏休みのアルバイトでなんとかやりくりできるような仕組みです。

つまり、親の経済状況が子供の進学に影響を及ぼさないということ。フィンランドは人口の少ない国なので、資源は人。教育を授けて優秀な人材を育てることこそ、国の成長につながるという考えなのです。そういった仕組みがしっかりあるため、親もがむしゃらに教育費のために働く必要もなく、だいたい16時から18時には会社を出て、それぞれの趣味の時間や家族団欒の時間を持つことができるのです。

誰もが無理なく、仕事、趣味、家族の時間をバランスよく持つことができる仕組みを国が提供しています。しあわせの定義は様々ですが、そういった将来への不安が少ないことが、しあわせにつながるような気がします。

\島塚さんに聞きました/
フィンランドの結婚観と自立の理由

1. 苗字や結婚のかたちにも多様な選択肢がある

夫婦別姓については、選択ができたから旧姓を取っておいたと話す島塚さん。

「フィンランドでは、まったく関係のない苗字にしてもいいと聞いたことがあります。自由なんですよね。家族で同じ苗字にするのもいいけれど、苗字だけが家族の絆を示すことではないと思って、私は別姓にしました。娘は20歳まで二重国籍が許されています。日本では二重国籍を認めていませんが、フィンランドのように選択肢があってもいいんじゃないかなと思います。フィンランドでは事実婚の人が多く、離婚も簡単にできる。そういうこともあって、結婚制度自体が揺らいでいると思います。

お母さんが2人、お父さんが2人の家庭もあって、特にヘルシンキでは結婚が多様化しています。“これが普通”みたいな概念がだんだんなくなっていて、自分のライフスタイルにあった結婚の仕方を選べるようになっているのはいいなと思います。だからこそ、自分で考えをしっかり持っていなければいけない。自分の考えを持つための勉強も必要ですね」

フィンランドの湖と森
森と湖が美しいフィンランド

2. 誰もが実家を出て独り立ちをする

前回の記事で、人をカテゴライズする言葉がフィンランドには少ないと話してくれた島塚さん。フィンランドには主婦も主夫もほとんどいないのだとか。

「基本的に男性も女性も自立しているから、一人でも生きていけます。離婚も簡単にできますが、そのためには自立していないとだめですよね。離婚をすると親権も半々であることが多いので、基本的にどちらかだけが面倒をみるということはほとんどないようです。いろいろな意味でフェアですね。責任を伴いますが、みんな自立するのが基本です。逆に、ずっと実家で暮らしている人の方が珍しいかもしれません。

そんなふうに人として自立している人が多いのは、やはり国からの資金的援助によって、誰もが高校卒業後に実家を出られるというのが大きい気がします。実家を出ることにより、国民みんなが家事、洗濯、掃除、料理など、ひと通りできる大人になっています。

また、学生たちは、ちょっとバイトをすれば暮らしていけるから、学業に専念ができます。親も仕送りのために一生懸命になって働く必要はありません。消費税は24%と高いですが、ちゃんと使われていて、還元されています。だからゆとりがあるんですよね」


島塚絵里さん 著書
『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』
どうしてフィンランドは、幸福度No.1なのか? 仕事・子育て・家族との関係、そして休みや自然の楽しみ方など、無理せず自分らしく生きるフィンランド人の暮らしの中に、そのヒントがあります。フィンランドで15年暮らしている島塚絵里さんが、日々の暮らしの中で見つけた幸せのかたちを綴ったエッセイ。SDGsの時代に必要な、本当に心地いい生き方とは何かを教えてくれる一冊です。
https://pie.co.jp/book/i/5633/

島塚絵里さんプロフィール

フィンランド在住のテキスタイルデザイナー・イラストレーター。1児の母。津田塾大学を卒業後、沖縄で英語教員として働く。2007年フィンランドに移住し、アアルト大学でテキスタイルデザインを学び、マリメッコ社でテクニカルデザイナーとして勤務。2014年より独立し、国内外の企業にデザインを提供。森のテキスタイルシリーズなどのオリジナルプロダクトもプロデュース。


text & edit:Mayumi Akagi 
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
※本記事は『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』(パイ インターナショナル刊)からの抜粋にインタビューを加筆しています

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