北欧

逆境をチャンスに変える日々の習慣6選。“SISU”に学ぶしなやかで健康な心作りとは 逆境をチャンスに変える日々の習慣6選。“SISU”に学ぶしなやかで健康な心作りとは

SISU,シス,フィンランド

フィンランドの人々の困難に立ち向かう果敢な姿勢、厳しい状況で発揮される強い心“SISU(シス)”。“SISU”があれば、人生に降りかかる試練をチャンスへと変えていくことができます。心と体、両方からのアプローチで“SISU”を育むフィンランドの生活様式を、北欧文化研究家で翻訳家・ライターの柳澤はるかさんに教えていただきました。

目次
逆境をチャンスに変える日々の習慣6選。“SISU”に学ぶしなやかで健康な心作りとは
  1. 【Finnish lifestyle 01】
    サウナとアイススイミングで幸せホルモンを得る
  2. 【Finnish lifestyle 02】
    日常的に森に行き、自然を感じる
  3. 【Finnish lifestyle 03】
    自転車移動で季節を味わう
  4. 【Finnish lifestyle 04】
    シンプルで栄養価の高い食事をとる
  5. 【Finnish lifestyle 05】
    ものを大切に、ミニマルに暮らす
  6. 【Finnish lifestyle 06】
    幼少期から話し合いで解決することを学ぶ
  7. お話を伺ったのは……柳澤はるかさん

【Finnish lifestyle 01】
サウナとアイススイミングで幸せホルモンを得る

『フィンランドの幸せメソッドSISU』の著者、カトヤ・パンツァルさんが心身の不調から解放されるきっかけになったのが、アイススイミング(冷水浴)とサウナ。アイススイミングは、冷たい海に入り、30秒ほど泳ぐこと。ちょっと過激に感じますが、くせになるほどの爽快感が得られるのだとか。


実は、アイススイミングは、うつ病の治療にも役立つという研究があります。うつの原因のひとつが、太陽の急激な変化などの生理的なストレスに欠けること。冷たい水につかり刺激を受けると、「ホルモン・ストーム」という現象が起こり、いわゆる“幸せホルモン”が多く分泌され、うつが軽減されるというのです。


アイススイミングのあとは、サウナで体を温め、筋肉の疲労を回復し、緊張を緩和するのがフィンランド流。「日本では冷たい海で泳ぐのは難しいですが、サウナのあと、水風呂に入って“整う”のと同じ。私は銭湯の熱いお湯につかって、冷たいシャワーを浴びることで代用しています」(柳澤さん)。冷水浴については、高血圧、心臓病、喘息がある人は医師に相談を。

\HOW TO COLD SWIMMING & SAUNA/

❶ アイススイミングのときは、水着、ウールの帽子、ゴム素材の手袋とサンダルを着用。頭と手足は冷えやすいため保護しておく。

❷ 4℃(フィンランドの冬の平均海水温)程度の冷水に30秒〜1分間つかる。

❸ シャワーを浴びてサウナへ。70〜100℃のサウナでスチームを浴びる。こまめな水分補給を忘れずに。

❹ 先に冷水に入ってからサウナに入っても、サウナで温まってから冷水に入ってもどちらでもOK。

 

 

自宅でやるなら……

自宅のシャワーで、最初は数秒、冷水シャワーを浴びることからスタート。毎日少しずつ時間を長くします。シャワーを浴びたあとは、すぐに震えはおさまり穏やかな感覚になるはず。そのあと、温かいお湯に入るか、温水シャワーで体を温めます。寝つけない夜には特におすすめ。


【Finnish lifestyle 02】
日常的に森に行き、自然を感じる

フィンランドでは、96%の人が週に2〜3回ハイキングやキャンプ、ベリーやキノコ採取などの野外活動を行うほど、森が大好き。森の中をわずか15分歩くだけで、ストレスが減り、血圧が下がり、筋肉の緊張がほぐれるということが研究でもわかっており、こうした森林セラピーが推奨されています。専門家によると、軽いうつ症状の治療や疲労回復にも役立つとのこと。森の中のきれいな空気を吸って、街の喧騒から離れることで、心のもやもやが自然と解放されます。


「山がちで住宅と森が離れている日本と違い、フィンランドは平地がほとんどで、気軽に森に入って行けるのが特徴。日本も都市計画などで、緑がもっと身近になるといいなと思います」(柳澤さん)。


【Finnish lifestyle 03】
自転車移動で季節を味わう

フィンランドでは、10km以上の道のりでも自転車通勤する人が多く、自転車専用レーンも整っています。


「雨や雪が多い気候ですが、『不適切な気候があるのではない、不適切な服装があるたけだ』という言葉があるくらいで、自転車は冬用のタイヤに替え、マイナス20度の寒さでも防寒、防水の装備を整えて毎日出かけるそうです」(柳澤さん)。


自転車に乗ることが、心臓や血管の病気の予防になるのは周知の事実。週にわずか1時間の自転車走行でも、心臓病のリスクが軽減されるという、デンマークの研究もあります。わざわざジムに行ってエクササイズしなくても、移動しながら運動でき、自然の変化や四季のうつろいを肌で感じることによる、心への効果も絶大です。

 


【Finnish lifestyle 04】
シンプルで栄養価の高い食事をとる

フィンランドの食事の考え方は、ポリフェノールなどの抗酸化物質を多く含むベリーと野菜、不飽和脂肪酸を含む魚、ライ麦パンを食べるというもの。

ライ麦パンには、白パンの3倍の食物繊維があり、ビタミンB1や鉄分などのミネラルも豊富です。油はキャノーラ油やエクストラバージンオリーブオイルなど、飽和脂肪酸が少ないものを使います。


また、幼稚園のころからプレートモデル(プレートの1/2を野菜、1/4をパスタやシリアル、1/4を魚や肉、ナッツ類にする)という考え方を教わり、それを意識しているのだとか。健康的な食生活が、生活習慣病だけではなく、うつ病のリスクを減らすということもフィンランドの研究でわかっています。


【Finnish lifestyle 05】
ものを大切に、ミニマルに暮らす

北欧の価値観に「レス・イズ・モア(そぎ落とすことによって生まれる美しさ)」があります。一種のミニマリズムで、物が多く飾られた家で過ごすより、開放的な屋外で過ごすほうに価値を置くというもの。


背景には、質素でコンパクトな暮らしをすれば借金は少なくて済み、ストレスも減り、自由な時間が増え、より健康で満たされた人生を送れるという考えがあるそうです。家事や家の中の修理もDIY思考で、まずは自分でやってみる人が多いとか。ちょっと面倒だったり初めてのことでも、粘り強く取り組み自分で解決策を見つけるのは、まさにSISUの考え方です。


「フィンランド人は、豪華なホテルよりも自然の中にある素朴なコテージでの休日を楽しみますし、高価なキャンプ用品をそろえるのではなく、昔ながらの道具を使い続けます。豊かさをひけらかさない国民性で、物質的なもの以外に価値を見出していると感じます」(柳澤さん)。


【Finnish lifestyle 06】
幼少期から話し合いで解決することを学ぶ

フィンランド人は、幼少時代からのSISUの考え方に基づく教育を受けています。保育園やプレスクール(6歳児の就学前準備期間)時代から、友だちとの対立を話し合いで解決したり、難易度の高いパズルに取り組んだりと、どんな課題にも粘り強く挑戦する姿勢を教えられます。


また、教育機関の平等への徹底的な取り組みと、すべての子どもを個人として扱うことにより、幼少期より「自分は満たされていて、責任ある個人だ」という意識が芽生えます。その基盤をもとに、子どもたちは小学校以降、いっそう独立心やあきらめない精神力を発揮することができるのです。

競争をあおることはしませんが、難しい問題にも粘り強く取り組むSISUの姿勢が、PISA(OECDの学習到達度調査)で上位に位置する高い学力の一因といえそうです。

<< そもそもSISUってなに? 折れない心を作る秘訣を読む


お話を伺ったのは……柳澤はるかさん

PROFILE
ライター、翻訳家。東京大学文学部卒業。人材育成会社に所属していた際、偶然訪れた北欧の国々にシンパシーを感じ、北欧文化の研究を開始。訳書に『マッティは今日も憂鬱―フィンランド人の不思議』(方丈社)など。
EVERYDAY SISU
フィンランドの幸せ習慣
カトヤ・パンツァル 著 
柳澤はるか 訳
¥1,760/方丈社

フィンランド人が持つ不屈の精神を表す言葉・SISU。フィンランドに移住した著者が、前著『フィンランドの幸せメソッドSISU』を出版後、離婚やうつ病、コロナ禍などの危機を再び乗り越え、より大きな視点でSISUをとらえた第2弾。

illustration:Kayo Yamaguchi text:Ema Tanaka web edit:Mina Ota
リンネル2022年12月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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