その暮らしは、華やかでも特別なものでもなく、自然とともに毎日を丁寧に生きるだけ。フィンランド西海岸オストロボスニア地域に住む4人のデザイナーと「アンドフィーカ」代表・今泉幸子さんがフィンランドの暮らしを伝えてくれます。今回は、カラフルな楽しみいっぱいの春のおはなし。
カラフルなイースターの装飾と真っ黒なマンミ
クリスマスの次に大きな行事といえば、イースター。
学校や仕事もお休み、お店もレストランも閉まるので、街中は静かです。クリスマスのような慌ただしさはなく、なんだかゆったりした気分になれるのが、イースター休暇の魅力かもしれません。
まだ外は寒いので植物はほとんど育たず、あいかわずモノトーンの風景ですが、室内は春色。黄色い水仙やチューリップ、そしてネコヤナギにカラフルな羽飾りをつけ、春の気分を盛り上げます。
ヒヨコやウサギの絵が描かれたカラフルな卵形の缶などがたくさん売られ、普段はキャンディを食べすぎないように言われている子どもたちも、イースター休暇は特別です。
でも、イースターに欠かせないマンミというデザートは真っ黒。
「どんな味なの?」と聞いてみると、「うーん、かなりヘビー」とタニヤ。
「私は好きよ」とエリーナ。
好き嫌いが分かれるようです。
お花もケーキもオレンジでコーディネート。
春のエネルギーを感じられるオレンジ色は、イースターにぴったりです。
イースターの焚火と小さな魔女たち
フィンランドでは、イースターに魔女がやってくるという言い伝えがあり、その魔女を真似て子どもたちが仮装し、イースター前日の土曜日にご近所を回ります。
「コロナの前の年、うちでは74人の子どもたちがドアをノックしたのよ。みんなにキャンディを渡すのに大忙しだったわ」とヨハンナ。コロナ禍では、対面を避けるため、家の前にキャンディを置いて風船を立てておく、という方式に変わりましたが、小さな魔女たちの数は変わりません。
大人たちは、魔女の悪霊を追い払うため、イースター前日の夜に大きな焚火を焚くのがこの地域の風習です。地元の農家の古い干し草やクリスマスツリー、木の枝を積み上げ、何時間にもわたって焚火を燃やします。すごい勢いで火が燃え上がり、周辺一帯には煙が立ち込めます。
赤いほっぺとそばかす、そしてカラフルな衣装と頭巾をかぶって、一日中キャンディ巡り。
外はまだ冬。でも、気持ちは春の季節
イースター休暇が来ると、気分は春。
久しぶりに自転車に乗って出かけたり、年によっては、地面から顔を出す小さな花を見つけたり、春はもうすぐそこまでやってきていると感じます。でも、フィンランドには「タカタルヴィ」という言葉があり、そろそろ春かな、と思ったら冬に逆戻りするような厳しい寒さがまたやってくることがほとんどで、そう簡単にはぽかぽか陽気の春にはなりません。
タニヤは植物を育てるのが好き。でも、フィンランドは暖かい時季がとても短いので、それを待ってから種を蒔くと間に合いません。室内で種を蒔き、しばらくの間はそこで育てます。双葉が出て、苗が伸び始めてきても、外にはまだ雪が残っていて、地面一帯がぬかるんでいます。最低気温はまだ氷点下。暖かい春が早く来ますように、とみんなが願う季節です。
「無地プラスワンのイースターエッグ」
イースターエッグのペイント方法にルールはありません。
水玉やストライプなどの幾何学模様でポップに仕上げるときもあれば、花柄でエレガントに仕上げるのもオーケー、モノトーンでシックにまとめるのも素敵です。
アンナヤリーサの4人は、とにかくシンプルが好き。4色の無地の卵をきれいにコーディネートできるように色選びには気を配ります。そして、プラスワンのこだわりは、パターンペーパーで作ったリボンです。
HOW TO MAKE
1. 水性アクリル絵の具を使います。洋服につくと落ちにくいので汚れてもいい服装で。
5. リボンの端をカット(自由な形でOK)し、卵に着せたら出来上がり。
アンナヤリーサとは
アンナヤリーサ(Anna ja Liisa)は、フィンランド西海岸オストロボスニア地域に住む4人のデザイナーたちが発信する地域ブランド。左より、タニヤ、アンドレアス、エリーナ、ヨハンナ。
ヘルシンキの北西約500キロ。起伏がない広大な大地の向こうには、真っ直ぐな地平線が広がっています。普通の暮らしのなかに、必ず喜びや楽しみがあり、小さな感動からデザインが生まれます。
教えてくれたのは……「アンドフィーカ」代表 今泉幸子さん
7年前に初めてこの地を訪れ、自然の美しさと人々の温かさ、そしてデザインのある暮らしに感動。以来、毎年のように現地に通い、デザイナー4人との心の通い合いがアンナヤリーサ誕生のきっかけとなりました。デザイナー4人とともに、アンナヤリーサの12か月の暮らしについてお伝えします。
photograph:Anna ja Liisa edit & text:Sachiko Imaizumi web edit:Noriko Naya
リンネル2022年5月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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