CULTURE
:俳優・中江有里さんが約3年ぶりとなる新刊『愛するということは』を発売! 女性が人生で直面する困難がリアルに描かれた一冊に
CULTURE
:
俳優の中江有里さんが約3年ぶりとなる長編小説『愛するということは』を刊行。本書は、子どもから大人になるまでの、複雑な母娘関係を描いた「愛」の物語。主人公・里美が若いときに罪を犯し、辛い状況が続くなかでも手を差し伸べる人との出会いによって、人生を軌道修正していきます。果たして中江さんが問いかけたかった家族とは? 幸せとは? 秋の夜長に疑似体験しながら読み進めてみて。
小説を読むことは、人生での覚悟を養うようなもの
結婚や妊娠・出産、子育て、仕事。女性が生きていくにあたって次々に直面する困難と、母娘の複雑な関係や愛についてリアルに描いた、中江有里さんの新刊『愛するということは』。俳優でもある中江さんが紡ぐ物語は、まるで映画を見ているようにスッと心に入ってきて、感情を揺さぶります。
「書くときは、どこにカメラを置いているのかを意識します。そこから見えるものと同時に、一人称の人物にもなって、演出をしながら演じてもいる。ここはクローズアップ、ここは引きで終わりたい、ここは音楽もちょっと入る、そういうことを自分のなかで実験しながら書いています」
11章からなる本作は、「夢見ることは」「母親とは」「子どもとは」「幸せとは」など、タイトルから人生について問いかけます。
「ひとつひとつが普遍的ですが、実ははっきりとした答えが見つからないもの。たとえば、『夢を見る』は希望に満ちあふれたポジティブな言葉に聞こえますが、本作では夢を見たことが彼女をマイナスに陥れてしまう。言葉そのものがもつプラスとマイナスの二面性は、何にでもあると思うんです」
主人公は普通の幸せを願うシングルマザーの里美。娘を育てるために、祝儀泥棒を繰り返します。
「実は、前作『残りものには、過去がある』に登場した親子なんです。子どもを利用してまで祝儀を盗む彼女が、そこまでしなければいけない事情は何だったんだろうと、書いた自分自身がとても知りたくなって。本作には多くの母娘が登場しますが、愛というのは人によって違うはず。ちょっと特殊な関係の親子の愛とは何なのか。自分なりに考えた“愛するということ”のひとつのかたちを、小説を通して書いてみたかったんです」
辛い状況が続く里美は、『溺れてる人を見過ごせない』と手を差し伸べる人との出会いによって、人生を軌道修正していきます。
「目の前で溺れている人に、浮き輪を投げるくらいなら誰だってできるはず。小説はそれと似ているところがあって、救いを求めて読む人がいると思うし、私自身そういう本が好きで読んできました。疑似的人生を体験できる小説を読むことで、ものの考え方や生き方が180度ではなく、一度でも変えられれば、本当の危機を避けられるかもしれない。読書にはそういう力があるのではと思います」
新著『愛するということは』
お話を伺ったのは……中江有里さん
なかえ・ゆり/1973年大阪府生まれ。1989年に芸能界デビューし、多数の映画やドラマに出演。2002年『納豆ウドン』で第23回BKラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。産経新聞にコラム「直球&曲球」連載するほか、多数の週刊誌や月刊誌に書評を寄稿。読書家としても知られ、読書をテーマにした公 演を全国で行 っている。 著書に『残りものには、過去がある』(新潮社)『万葉と沙羅』(文芸春秋)ほか。
こちらもチェック!
photograph:Shinnosuke Soma text:Mayumi Akagi(interview)、BOOKLUCK(review)
リンネル2024年12月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
おすすめ記事 RELATED ARTICLES
Recommend
SNAPRanking
DAILY
/
WEEKLY
季節のおすすめSEASON TOPICS
暮らしのいいこと大集合!Special Feature




































