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:【女子旅 石川県】 金沢・国立工芸館で、花の工芸品を楽しむお花見を。「移転開館5周年記念 花と暮らす展」開催中
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東京から石川県金沢市に移転した国立工芸館。移転開館5周年を記念した企画の第1弾として、6月22日まで「花と暮らす展」を開催中です。花をテーマにさまざまな技法で、工芸・デザイン作品として表現された、花と花を活けるための器を展示する本展の見どころをたっぷりご紹介します。
東京から金沢に移転した、国立工芸館

明治後期に建てられ、1997年に国の登録有形文化財に登録された木造の旧陸軍施設「旧陸軍第九師団司令部庁舎」と「旧陸軍金沢偕行社」を移築・活用
国立工芸館は日本で唯一の、近現代の工芸・デザイン作品を専門とする国立美術館。
1977年、東京都千代田区北の丸公園に東京国立近代美術館の分館として開館し、2020年に金沢市に移転・開館。陶磁やガラス、漆工、染織、金工、グラフィック・デザインなどの作品4000点以上を収蔵しています。
思わず写真を撮りたくなる建物は、明治期に建てられた二つの旧陸軍の施設を移築、建築当時の色を再現したもの。向かって右側の緑色が鮮やかな建物には入ることはできませんが、左側の建物でさまざまなテーマに基づいた所蔵作品展や企画展などを開催しています。

当時のライトも素敵
国内外の工芸・デザインに関する作品集や美術雑誌を多数揃えたアートライブラリや、ミュージアムショップは無料で入ることが可能。金沢21世紀美術館や兼六園もすぐの立地なので、アート好き、建築好きなら気軽に訪れたい場所です。
「移転開館5周年記念 花と暮らす展」

そんな国立工芸館で現在開催されているのが「花と暮らす展」。昔から多くの工芸家によって、さまざまな技法で表現されてきた花や植物。本展はそんな身近な花をテーマに、工芸・デザイン作品に表現された花と花を活けるための器を、国立工芸館の所蔵作品約100点を中心に紹介しています。
近現代の工芸・デザイン作品における「花」のさまざまな表現や素材の違いに注目し、工芸の魅力を再発見します。

会場に装飾された花もかわいい
春から夏に咲く花のモチーフに注目

左から、田村耕一《白泥椿文壺》 1969年、北大路魯山人《紅白椿鉢》1938-40年ごろ、望月集《花文大鉢「椿」》2021年 すべて国立工芸館蔵
具体的な花の形をモチーフにした作品を集めた第1章では、桜や椿など古くから使われる花のほか、ナズナやネギなどの身近な野の花や野菜もモチーフに。
花そのものを写生するのではなく、どのように図案化されて意匠になっていったのかという観点から、作品を見ていくのも興味深いです。

十三代今泉今右衛門(善詔)《色鍋島薄墨石竹文鉢》 1982年 国立工芸館蔵 撮影:エス・アンド・ティ フォト@2019
ポスターのメインビジュアルにも使われた、十三代今泉今右衛門の《色鍋島薄墨石竹文鉢》は、セキチクのつぼみが少しずつ花開いていく様子が表現されたもの。

右の花器はネギが描かれている。左から、清水六和(五代六兵衞)《金彩わらび四方飾皿》1928年、音丸耕堂《彫漆薺文茶入》1959年頃、田口義明(善明)《蒔絵棗 プリムラ》1987年、増田三男《花器 葱文》1987年 すべて国立工芸館蔵

同じ牡丹というモチーフを蒔絵、ガラス、磁器と素材による表現の違いも興味深い

花がデザインされた型絵染着物も。左から、釜我敏子 《型絵染着物「ペンペン草」》1980年、木村雨山 《縮緬地友禅訪問着 ばらの花》1967年 いずれも国立工芸館蔵

花モチーフの小さな装身具
華やかなものから野の花まで、いろいろな技法で表現された花のモチーフはかわいらしいものも多く、有名作家による工芸品も少し身近に感じられます。
花を想って作る、デザインの多様性

芹沢銈介の《紬地型絵染華字文のれん》1960年 国立工芸館蔵
第2章に並ぶのは、花の姿を具体的にデザインしたものではなく、花を思い起こさせる作品。「華」という一文字を意匠化した芹沢銈介の作品のほか、花のデザインの多様性に注目します。

高坂雄水《銀線飾壺》1962年 国立工芸館蔵 撮影:森善之 ©2020

佐々木英《蒔絵彩切貝乾漆盤 水ぬるむ》1984年 国立工芸館蔵

長野垤志《鳥飾花瓶》1951年頃 国立工芸館蔵
3月の季語である「水ぬるむ」とつけられた蒔絵の盤など、暖かくなり花が咲いていく様子をタイトルから想像するような作品や、鳥が飾られた花瓶や女性が舞い踊る様子を表現した人形なども見ることができます。
花をテーマに暮らしを楽しむ

右は富本憲吉《色絵花字紅茶碗セット》1958-59年頃 国立工芸館蔵
最後の章は、日常で使われる器や花を活けるための花器など、花を暮らしに取り入れるための作品を紹介。
花かごやティーカップ、電気スタンド、絵はがきまで。もしこの作品が家にあったら、どうやって使おうかなと想像しながら楽しむことができます。

竹を束ねて編み、さらにねじりを加えた美しい花かご。藤沼昇 ≪束編花籃 気≫1992年 国立工芸館蔵 撮影:アローアートワークス ©2006

杉浦非水のリトグラフ印刷された絵はがき。左上から、《絵はがき アネモネ》、《絵はがき 罌子粟(おうしぞく)》、《絵はがき 木瓜(ぼけ)》、《絵はがき チウリツプ》、《絵はがき たんぽ》1915-16年頃 国立工芸館蔵

ルーシー・リー 《スパイラル文花瓶》1980年頃 国立工芸館蔵

モーリス・ドニ《花束を飾った食卓(マルト・ドニと二人の娘ベルナデット、アンヌ=マリー)》1904年 国立西洋美術館蔵 ドミニク・モーリス・ドニ氏より寄贈
また特別に、国立西洋美術館からの作品2点も公開。モーリス・ドニは、花をモチーフにした作品をたくさん描いたフランスの画家。花のある暮らしを描いた作品は、工芸品と一緒に見ると、一層素敵に見えます。
グラフィックデザイナー杉浦非水の旧蔵本も

牧野富太郎の『牧野日本植物圖鑑』にはメモや写生済みの印も確認できる
また、明治から昭和に活躍したグラフィックデザイナー、杉浦非水(ひすい)の旧蔵本を紹介するテーマ展示「本と暮らす」も同時開催。
杉浦非水は、レトロでモダンなグラフィックが印象的な、グラフィックデザイナーの先駆け。写生を通して、自然の正しい姿や形を学ぶことが図案制作にとって重要と考えていましたが、一方で学術的調査もしており、植物図鑑をたくさん所蔵していたのだとか。本展ではその蔵書の一部を見ることができます。

杉浦非水による写生の集大成。《非水百花譜》1920-22年 国立工芸館蔵

杉浦非水が、工芸研究家の渡辺素舟とともに編集した『世界植物図案資料集成』1957年。

また常設の、金沢出身の人間国宝・漆芸家の松田権六の仕事場を移築、復元した工房では、制作道具や記録映像のほか、「花と暮らす展」に合わせて伝統的な文様でもある梅の作品を展示。情感豊かな花の表現を見ることができます。
オリジナルグッズもかわいい

「花と暮らす展」オリジナルグッズ。左からトートバッグ ¥3,000、サコッシュ¥2,600
ミュージアムショップでは、杉浦非水の絵はがきのデザインから、夏水仙が描かれたトートバッグとチューリップが描かれたサコッシュを販売。「花と暮らす展」に展示されている作品解説を掲載したリーフレット(100円)も。

国立工芸館オリジナル 米蜜ビスケット 10枚 ¥1,100
国立工芸館の外観が描かれたビスケットは、『hokka』で知られる北陸製菓とのコラボで誕生したアイテム。金沢で一番古い飴屋「俵屋」のじろあめを使用した自然派ビスケットは、お土産にぴったりです。
身近な自然とデザインとの関係に目を向けられる所蔵作品展。近現代の工芸・デザイン作品における花のさまざまな表現を見て、工芸館ならではのお花見を楽しんでみては?
展覧会情報
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photograph:Kozue Hanada text & edit :Mayumi Akagi
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