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:奇妙礼太郎さん「みなさんと楽しい時間を過ごしたいだけ」/アルバム『オールウェイズ』インタビュー
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やわらかな陽ざしのぬくもりを感じさせるアコースティック・サウンド、独特かつ圧倒的な光を放つボーカルで人気の奇妙礼太郎さんが、約2年ぶりとなるアルバムをリリース。ライブで演奏をしているバンド・メンバーの方々と制作された楽曲を含む内容は、軽やかさとともに、音楽と真摯に向きあう奇妙さんのストイックな姿勢がダイレクトに伝わる仕上がりとなりました。
自然の流れのなかで生まれた最新アルバム

━━前作のリリースから約2年、昨年にはTENSAIBAND BEYONDとして5年ぶりのツアーを開催するなど、充実の時間を過ごされていたのでは?
奇妙礼太郎さん(以下敬称略) そうですね。なんかずっとずっとそうなんですけど、楽しく過ごしていたなっていう。
━━ライヴでは帰りたくないっと言って、客席を練り歩いた姿が印象的でした。
奇妙 練り歩いてた? そうでしたっけ。会場ではアメリカの親戚たちと20年ぶりぐらいに会って、うれしかったことを思い出しました(笑)。
━━そして今回5作めのアルバム『オールウェイズ』が完成。今回はどういう経緯でアルバム制作がスタートされたのですか?
奇妙 バンド・メンバーと次のアルバムを制作できたらいいなと思って相談したのが始まりです。今までライブで何度も共演しているのですが、作品として録音したものがなかったので、一緒にできたらというところからスタートしましたね。
━━いかがでしたか? スタジオでのセッションは。
奇妙 実はあんまりセッションをしていなくて。僕が自宅で作ってきたものをプロデューサーの中込陽太さんに渡して、そこで出来上がったものをバンドのみなさんが演奏していくような流れで進行していった楽曲が多いですね。
━━演奏してもらうにあたって、奇妙さんからメンバーの方々に何かお願いしたことはありますか?
奇妙 僕が言うことはないですかね。みなさん素晴らしいミュージシャンなので、ただすごいなと思って見ているだけでした。何かあるとしたら、中込さんが伝えてるっていう感じで。僕は見てるだけ(笑)。
━━また、ライブ感が伝わる音になっている気がしました。まるで会話をしているようなナチュラルな雰囲気が。
奇妙 そうですね、楽曲によって異なる方法で完成させているのですが、タイトル曲「オールウェイズ」は、家で録音した音源をほぼそのままの状態で収録したものになりますね。
━━なるほど。また、バンド・メンバーの方々と録音した楽曲は、1960〜80年代くらいの、ファンク、ソウル、R&Bなどの影響を感じるものが多いですね。
奇妙 そうですね、最初に中込さんを含めたメンバーのみんなと、昔のソウル・ミュージックみたいなもの、ずっと耳にしているけれど表現したことのないタイプの音楽にも取り組んでみたいねという話をしていた記憶はあります。結果、そういう感じの曲もあるし、そうでないものもある。面白いアルバムになったのかなと。
無理をせず、浮かんだ言葉を大切に

━━また、奇妙さんの音楽からは暮らしの風景、また気づきを与えるものが多い印象です。今回のアルバムでは、どんな暮らしを切り取って描きましたか?
奇妙 「ヤンキー BE MY BABY」は、当初まじめな言葉を書いていたのですが、なんかつまらんなと思って全部消して、書き直したりとか。家でパッと思い浮かんだ、意味のないなんとなく口から出てきたものを、そのまま表現したものが多いですかね。「オールウェイズ」も寝起きで浮かんだ言葉をそのままです。
━━特に後半のアコースティック曲に関しては、洗いざらしの感情をそのまま表現しているような。
奇妙 歌詞を書き直してみたりするんですけど、自分はあまりそういうのが上手じゃないことを知っているので、意味がよくわからない言葉でもそのままでいいかなと。無理しないって感じですね。
━━ひらめきを大切にされているのですね。
奇妙 そうですね。じっくり考えていいものが生まれるのならば書くんでしょうけど、そういう能力がなくて。本作の歌詞に関しては自分なりにやってみたという感じですね。
━━タイトルに関しても、ひらめきというかインパクトの強いものが多いですよね。先行トラックになっている「スケベなSONG」を筆頭に。
奇妙 ただの受け狙いかもしれないです(笑)。楽しくライブしたいっていう、それだけの気持ちなので。言いたいことは特になくて、ただみなさんと楽しい時間を過ごせたら、それでいいみたいな。
━━でも、じっくり聴いていると、奇妙さんの温かな人柄、そして暮らしで大切にすべきことがじんわりと伝わってきます。
奇妙 それは聴いていただいている方の感受性が高いからだと思いますよ。僕の歌で号泣している姿を見たり、感動しましたというメッセージをいただくこともあるですが、僕はそう感じていただく方の能力がすごいのだと思う。聴く力があるというか。いつもそう思います。ライブに来てくださる方々を見ていると、そこに悪い人はいないなって感じる(笑)。
昔ながらの方法で炊飯をする暮らし

━━後半の弾き語り「こどもラジオ」や「ほどける」は、特に心に響くメッセージを感じましたが。
奇妙 ただギターを弾くのが好きで、演奏しているうちに曲になるなと思って完成させたものなので、イメージは特にないのですが。「ほどける」は何かの本を読んで思い浮かんだものですね。書くことないなと思っているから、何かを読んだり見たりすることはありますね。
━━また、ラストの「ダーリンマイベイビー」は、突然曲が終わるアレンジになっていますね。
奇妙 当初フェード・アウトで終わると想定して、長めに録音していたのですが、丸ごと入れたほうがよいのでは?という話になって。突然アルバムが終了するのは、意味ありげでいいんじゃないですかっていう(笑)。また、もう一回繰り返し聴きたくなる効果もあるのかなと思いました。
━━確かにリピートしたくなる構成ですよね。
奇妙 僕としては「オールウェイズ」を冒頭にしたかったのですが、周囲の反応が微妙で。却下されたことはいまも根にもっています(笑)。
━━(笑)。今回バンド・メンバーの方とともに制作した楽曲もあるなど、アルバム制作を通じてまた新たな音楽的ビジョンが見えた部分もあるのでは?
奇妙 アルバムを作ることが楽しくて、今回入ってない曲がいっぱいあるので、それも発表できたらと思うのですが、いまはこのアルバムが完成したばかりなので。
━━確かに。その前にバンドツアーが控えています。
奇妙 今回の収録曲は割とアレンジしやすいというか。その場で、異なることを表現できるものが多いので、ライブするのが楽しみですね。メンバーのみんなとステージに立てることはもちろん、全国各地のおいしいものを食べることも。この間も、福岡だけで売っていると思われる明太子があるんですけど、それがおいしすぎて(笑)。冷凍をしてないので、粒がぎゅっとしているような感じで。
━━奇妙さんは、自炊もよくされるのですか?
奇妙 しますね。最近は、昔の人がやっていた方法でご飯を炊いています。パスタみたいに、大量のお水に30分くらいお米を浸して、そのまま火をつけてから5、6分くらい沸かし、水気を切って10分くらい蓋をして蒸らして出来上がるという。炊飯器が浸透する前は、そういう炊き方だったらしいのですが。それで炊いたご飯はデンプン質が抜けて、さっぱりとした味わいになります。カレーに合うと思いますよ。
NEW ALBUM『オールウェイズ』

¥3,520
ビクターエンタテインメント
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映画『私にふさわしいホテル』の主題歌として書き下ろした「夢暴ダンス」、先行配信された「スケベなSONG」を含む全10曲を収録。全曲の作詞・作曲を奇妙さんが手がけた作品。ストリングスやホーンなどを取り入れた楽曲もあるなど、よりドラマティックになったサウンドで心がほどける声を味わえます
PROFILE
きみょう・れいたろう/1976年、大阪府生まれ。98年より音楽活動を開始し、16年にソロ名義でメジャー・デビュー。6月21日の札幌を皮切りに、奇妙礼太郎 5th Album「オールウェイズ」Release Tourがスタート。東京公演は7月4日・恵比寿リキッドルームにて
https://kimyoreitaro.com/
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photograph:Miho Kakuta text:Takahisa Matsunaga
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