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:「100%自分を愛する気持ちを持つことが大切」/アンジェラ・アキさん、アルバム『SHADOW WORK』インタビュー
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「⼿紙 〜拝啓 ⼗五の君へ〜」など、美しい情景が広がる楽曲の数々を発表している、アンジェラ・アキさん。2014年に活動休止して以降、アメリカへの留学やミュージカル音楽作家としての活動を経て完成した14年ぶりとなるアルバムは、これまで以上にご自身の内面と向きあった内容になっています。それらのナチュラルな言葉からは、これからの人生や暮らしをどう過ごすのかのヒントが潜んでいるような気がしました。また、年齢をかさねるうえで気になるメンタル・ヘルスに関してもおうかがいしています。
自分の闇と向き合うことで、完成した14年ぶりのアルバム

━━オリジナル・アルバムとしては14年ぶりとなる作品です。この14年はどんな時間を過ごされていたのでしょう?
アンジェラ・アキさん(以下 アンジェラ) 日本での音楽活動を休止して渡米してから10年以上が経過するのですが、最初の5年は勉強に明け暮れる時間でした。大学生としてフルタイムで学校に通い、オンラインでの受講もして、いろいろなことを学びました。そのあとはミュージカルの仕事を始めて、楽曲提供などもさせていただきましたね。
━━日本とアメリカの暮らしの違いは、どんな部分でしょうか?
アンジェラ クルマ社会なんですよね、アメリカは。だから運転はたくさんしないといけないので、そこは凄く大きな違いではありますね。日本、とくに東京は電車でいろんな場所で移動ができることが便利でした。
━━その暮らしのなかで生まれたのが、本作『SHADOW WORK』ではないかと思いますが、14年前に作っていたころとは異なる気持ちで制作に取り組まれていたのではないのでしょうか?
アンジェラ アメリカに渡って、音楽を一から勉強し直している期間やミュージカル作品を手掛けている中で、自分自身が歌うための音楽を作りたいという気持ちは全く湧いてきていませんでした。でも、その途中で世界がパンデミックに陥ったことをきっかけに、メンタル・ヘルスの問題が発生して、カウンセリングを受け始めました。そこで、幼少期のトラウマだったりとか、自分の奥底にある<自己肯定感のなさ>などに向きあった。結果、この体験を自分のライフワークのひとつしたいというか。心理カウンセリングを通して自分が経験したことをアートとして表現できないか?と考えていくなかでこのアルバムが完成しました。
━━では、楽曲制作のアプローチも前作と大きな変化があったのではないのでしょうか?
アンジェラ 留学する前にあった自分のパレット上に載っている色の数に比べて、その後集中的に作曲の勉強をして得た色の数は10倍じゃきかないぐらいになっていて。14年前の自分にはない、あってもうまく表現できなかったことを描くことができたと思います。
━━今回、曲のタイトルを全部英語にされていますよね。また言葉の載せかたも、日本語を使われていますけど、英語がフィットするような雰囲気。アンジェラさんが暮らしている環境などが、自然に反映された印象がします。
アンジェラ たぶん、この10年はJ-POPは聴いていなかったと思いますし、いわゆる洋楽と呼ばれるタイプのものをメインに耳にしていた影響ではないかと。でも日本のヒップホップは好きで聴いていました。
━━おっしゃられるように、ヒップホップなグループ感もありますよね。
アンジェラ 横乗りのね、そういうビート感が私は好きですから。
━━また、今回はグラミー賞獲得のプロデューサーや、日本のクリエイターの方々など、さまざまな方をプロデューサーに迎えて制作されていますよね。
アンジェラ 今までは自分でアレンジやプロデュースを手掛けるなど、すべてを自分で背負っていたことが多かったのですが、ミュージカルの仕事もさせていただいた影響もあってか、総合的に芸術を作ることに楽しさを感じるようになりました。自分ひとりだけでは、限られたものしか表現できないわけじゃないですか。そこに誰かが加わると、自分が持っていなかった発想が加わってきて楽曲より豊かになる。だから、今回はプロデューサーの方にお願いしてみようと。最初は全てアメリカのチームだけでやろうと思ったんですけど、どんどん楽しくなってきて、どんどん曲が生まれてきました。だったら、日本の感覚があった楽曲があってもいいのではないのか、と考えていくなかで歌詞や言葉を大切にして編曲してくださるトオミヨウさん、昨年のツアーでギターを弾いてくださった田中義人さんにもお願いすることにしました。
自分の伝えたい思いだけを届けたい

━━先行トラックになっている「Floating Planets」は、戯曲的というか。俯瞰で若かりし恋を振り返っているような印象がする楽曲ですよね。
アンジェラ 戯曲的な楽曲ですと言えたらよかったのでしょうが、これは私の離婚後のリアルな失恋話です(苦笑)。40代前半で17年一緒にいた人と別れたあとだったので、20代以降そういう出会いの経験をしていなかった。だから、当時の感覚とまったく異なるものなんですよね。20代の時って終わりが来てほしくないから、どうすれば終わらないようになるのか必死になるじゃないですか。でも、40代になっちゃうと、私は離婚を経験しているせいもあるからか、すべてはやがて終わることだとどこかで考えている。人生に何も続くものはない。喜びもどん底も、一定の時間が過ぎたら終わりが来るんですよね。だからこそ、幸せと別れがつねに背中あわせにあるっていう感覚でお付き合いをしていたので、とても新鮮で楽しい時間でした。20代だったら、ロミオとジュリエットみたいに、瞬間的に恋愛して突然別れて悲劇になるみたいな流れになるのでしょうが、今となってはそういう結末もオプションとして考えられる。
━━なるほど。でも、いろんな経験をしたからできる、楽しめる恋愛ってありますよね。
アンジェラ 実際私の周囲の40代のシングル・マザーでも、恋愛を頑張っている人もたくさんいる。どんな年齢になっても人生、捨てたもんじゃないっていうか、ここから始めるってとてもいいことだと思います。最近、アメリカのドラマを観ていると、40代、50代とかの恋愛がフィーチャーされている作品がすごく多くて、メインどころと言ってもいいくらい。日本だと<がんばってますよね>みたいな視点で見られることもあるのかもしれませんが、それは決して痛いものではないので、私はそういう表現を、日本語でも発信していけたら。リンネルの読者のみなさんも、恋することを封印されている人がいらっしゃるのでは?
━━そうですね、気になるけれどあまり表にはださない読者はたくさんいらっしゃると思います。
アンジェラ 日本では、自分は母親だとか、社会的な立場があるから、恋なんてしちゃいけないのかなみたいな人もいらっしゃるのかもしれませんが、アメリカでは60代の友人がマッチング・アプリで恋人を見つけているし、そういうことがとてもあたりまえな風潮になっている。日本とアメリカの違いはっていうと、もしかしたらそこなのかもしれませんね。年齢に対する抵抗があんまりない。逆に、年齢を重ねたほうがいけるじゃん!みたいな。だっていろんな経験をしてきているし、自由に使えるお金も増えているし、社会的地位もあるし、全部が全部が楽しくない?みたいな。
━━今の自分がどういうものなのか、客観視もできますね。でも、日本の40代はなかなか自由がないことが多いようです。
アンジェラ 子育てや仕事が一番忙しい時期ですしね。落ち着いて気づいたら、もう50代になっていたみたいな。私は、カウンセリングを受けてきて感じたのは、自己肯定感が低くて、自分を100%愛しきれていなかったという事実。実は15%くらいしか愛せていなかったなって。だから、誰かと向きあったとき、100%の愛をあげているつもりが、向こうからしたら15%くらいにしか感じられない。子どもたちに対しても恋愛に対しても同様。彼らに豊かな愛を与えたいと思ったら、まず自分を愛してあげないと。
━━ご自身をていねいに愛する姿勢が、ボーカルからも伝わってきました。
アンジェラ 私は作曲、作詞など、アーティストとしてやらないといけない能力のなかで、自分のもっとも弱い部分が<歌>じゃないかって思っていました。あんまり自分の声が好きじゃなかったけれど、歌うしかないし。それが自己嫌悪だったりとか、肯定感の低さにつながっている部分でもあった。でも10年以上活動から離れ、その間には自分用のほかにミュージカルの現場では26人の登場キャラクター全員用のデモ音源を歌っていたりしていた結果、いい意味でうまく歌をうたうことに対してどうでもよくなったというか。ヘタでもいいし、衰えていてもいいみたいな、とっても肩の力が抜けたのです。本作では、もちろん何度も歌い直して、ベスト・テイクをめざしたのですが、がんばり具合が違いましたね。誰かに認められたいみたいな、評価から離れた結果、自由な声を表現できた気がします。
━━今回のアルバム制作を通じて見えたこと、得たものはありますか?
アンジェラ やりたいこと、自分のビジョンを突きつめることを、昔からしていたつもりでしたが、評価されたい、認められたいという気持ちがそれよりも強かった気がします。ビジョンがあって、何を言われようが押し通すみたいな勇気がなかったと思う。ここで私は主張してはいけないんだっていう、ブレーキがかかっていたと思うんですよ。こういうことは周りの大人に任せようとか、受け身な感じのところが。でも、今回はもう受け身どころか、周囲の意見が超うざいと感じています(笑)。自分のイメージをちゃんと形にしたいっていう、責任持ってやりたいって気持ちがすごくあったなかでの制作だったので、それがとても楽しかった。今後はこのやり方で楽曲制作をしていきたいですね。
筋肉は<金>だよって伝えたい!

━━アンジェラさんのお話をうかがっていると、メンタル・ヘルスに対して、我々ももっと真剣に取り組んでいかなくてはいけないなと感じました。
アンジェラ みなさんにお伝えしたいのは、やばいって思う前にカウンセリングに行ったほうがいいということ。私は、幼いころからずっとトラウマを抱えてきて、2020年のパンデミックの頃、心が破綻してしまって通うことになったのですが、やばいって思ったときはもう遅いんですよ。女性がシミ取りに行くみたいに、自己投資みたいな感覚で通ったほうがいい。綺麗にするって、外見だけじゃないと思う。保険が効かなくて大変な部分もあるし、カウンセリングしていただく先生との相性もあると思うのですが、通うことで生きやすくなるんですよ。苦しみから解き放たれるのではなく、それが訪れたときにどう対応するかっていう目線を与えてくれます。私はカウンセリングを受ける前は、自分は被害者なんだと感じていて、その逆に加害者がいるという二面性でしかとらえられていなかったのですが、このループから抜けだした瞬間、視点がふわっと広がった気がしました。自分がとても狭い世界で苦しんでいたと、俯瞰して見られるようになりましたね。たとえば、虹を見ているはずなのに、自分には一部の色しか見えていなくて。それに嫌悪感を持っていたのですが、カウンセリングによって全体や、さまざまな色が見えるようになったのです。
━━なるほど。
アンジェラ もちろん、被害者である過去を消すことなんてできません。私の場合はハーフだったから、幼少期からよそ物あつかいされて生きてきたので、どうやったら、どこに行けば1番安全なのかって考え、部屋のなかに閉じこもっていた。また、誰と仲良くなればいじめられないかとか、どういうふうにふるまえば溶けこんで、どう歩けば人に好奇な目で見られないのかとか、どうすれば目立たなく過ごせるのかを、オートプログラムしていた感じでした。その後、高校生になってハワイへ進学したことをきっかけに故郷を離れて以降も、そういう装置をもう使用しなくていいことがわかっていながら、プログラムを走らせたまま40代まで生きてしまった。結果、破綻してしまったのです。幼少期の経験があって、それがあなたの性格をこういうふうに構成させたけれど、今それは必要ないって誰かに言ってもらえなかったらわからなかったと思います。カウンセリングを受けることで、自分に深く根付いているプログラムが勝手に動き出すのを意識して、ストップをかけることができる。だからとても生きやすくなってきました。気軽にカウンセリングを受けに行ったほうがいいですよ。
━━歯医者さんで定期検診するみたいな感覚で。
アンジェラ そう。クリーニングと一緒。歯垢が溜まりすぎて、虫歯になり、やばい状態になってインプラントになる前に、余計なものは早めに取り除いたほうがいいと思います。身体の未病ケアみたいなものはスタンダードになっているとは思いますが、メンタルヘルスに関して日本ではまだ抵抗感みたいなものが強いのではないかと思います。本当にブレイクダウンして、なかなか立ち直れない極限になってから通う場所になっているのではないかと。でも、冷蔵庫の機械音とかクラクションなどちょっとした生活音に対して不快を感じるような、自分の中の小さな違和感やアラームを感じた時点で、カウンセリングを受けたほうがいいと思う。非常ベルが鳴り響く前に、どう対処したらよいかを知ることが出来るので。
━━そういうメンタル・ヘルスの大切さにも気づける作品になっていると思います。
アンジェラ 心が壊れそうな状態にある人も、そうでなくても何か人生がうまくいかないけれど鎮痛剤を飲めばなんとかなるみたいな、そういうモヤモヤな状態を私自身はずっと無視し続けて、非常ベルの状態にまで行ってしまいました。この作品は、そういう状態にある・なりそうな人をスッキリさせるものではないと思います。そもそもエンターテイメントって、その瞬間がよくなればいいってものだけではなくて、何か変化をうながしたりとか、考えるきっかけになるような体験であってほしいと考えていて。そこから何を学んで、どう暮らしに役立てていくかという考えを与えるものであるべきだと思う。日本の人って、ネガティブなことに蓋をして生きている人が多い印象。この作品が、そういうことにもきちんと目を向けていただけるようなきっかけになればうれしいですね。
━━心の窓がちょっと開く言葉が散りばめられていますよね。
アンジェラ 人間の心には波動があるから、共鳴する人には何か響くものがあるのではと思います。
━━現在のアンジェラさんの暮らしにおいて、音楽以外で心を整えるものはありますか?
アンジェラ 筋トレです。特に40代になってからは、絶対に筋トレしたほうがいいですよ。筋トレの<筋>は貯金の<金>だよって伝えたい! 年齢をかさねると、体を壊してすぐに寝込んでしまうと、ガクンと力が衰えるし、足腰が不自由になってしまう。80代になっても、自分の足で颯爽と歩きたいのならば、絶対に筋トレするしかないんですよ。いまやっていることが、将来に必ずつながりますから。更年期もそうだし、筋トレをすることで代謝を上げてバランスを取るっていうか。心と身体は繋がっている。それが精神的にもスッキリするんですよ。嫌なことも忘れられるし。苦しみが来ても怖くないとか、真っ当にいろんなことをやっていけるって気分にもなれる。
━━どんな筋トレがオススメですか?
アンジェラ 自重トレーニングはダメ。それは筋トレではなく、メンテナンスですから。スクワットでもちゃんと重りやバーを持っておこない、自分の筋肉を一度破壊して新しいものを作る。それが筋トレですから!10分とか15分だけでも、ふだん着でもいいので、胸筋、背筋、足の筋肉を増強させる時間を作ること。その後で、メンテナンスをすればいいと思います。
14年ぶりのオリジナル・アルバム『SHADOW WORK』

アンジェラ・アキ/¥3,850
ソニー・ミュージックレーベルズ/レガシープラス
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心の奥に追いやってきた怒り、嫉妬、劣等感、恥、恐れなどの<闇>と向きあい、受容していく心理カウンセリングの方法をタイトルにしている本作。先行配信された「Pledge」、「Floating Planets」を含む全15曲収録したボリューム作。グラミー賞を獲得しているDim Starを筆頭に、国内外のプロデューサーとタッグを組んで完成させた楽曲からは、ミュージシャン・人間として、さらに輝きを放つアンジェラさんの現在を感じることができるはず。細部にまでこだわったアートワークにも注目。
PROFILE
あんじぇら・あき/バイカルチュラル(⽇本とアメリカ)のシンガー・ソングライター/ミュージカル⾳楽作家。2005年にメジャー・デビュー、「⼿紙 〜拝啓 ⼗五の君へ〜」など時代を超える名曲を多数発表し、14年に活動を休止させ渡米し留学。その後、ミュージカル音楽作家として活動を開始する。25年より本格的にアーティストとしても再始動。5月〜全国ツアー「Angela Aki Tour 2026 SHADOW WORK」がスタート。ツアー詳細、最新情報はオフィシャル・サイトにて。
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ニット¥29,700、タンクトップ(参考商品)、デニムパンツ¥48,400/すべてアドーア(アドーア六本木ヒルズ店 (03-3475-5915) )、ピアス左耳 下¥84,700、ネックレス¥119,900/ともにヒロタカ(ヒロタカ 表参道ヒルズ(03-3478-1830))、眼鏡、靴/ともに本人私物
photograph: Miho Kakuta styling:Yoshiyuki Mayama hair & make-up: Naomi Kubota text: Takahisa Matsunaga
※3/19発売のリンネル5月号では、Webとは異なる写真とインタビュー記事を公開
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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