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:【岩手県花巻・親子で心満たされる旅】 大自然と文学と、音楽と。宮沢賢治の愛した理想郷へ。
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豊かな自然を感じる旅先はいくつもあって迷うけれど、加えて「子どもと一緒に、物語を感じる旅をしたい!」となったなら、ここ一択かもしれません。
岩手県のほぼ中央に位置する花巻。そう、詩人・童話作家として知られる宮沢賢治の故郷です。
筆者が訪れたのは、毎年8月末に行われているイベント「イーハトーブフェスティバル」。2025年のイベントのようすも、あわせてレポートします。
花巻の自然 1
電車と徒歩で行ける!
美しい大自然が待つ理想郷
ビルから家、家から山へとみるみる景色が変わり、ぐんぐん緑の繁みが増すようすに見とれていると、思った以上に早く感じました。東京駅から新幹線で3時間、JR新花巻駅に到着です。
西口駅前広場に出ると、さっそく目を引くモニュメントが!

宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』をモチーフに作られた、青いアーチゲートです。
上部にはSLが走り、側面には蠍などの星座がレリーフとしてあしらわれ、ゲートをくぐると自動で「星めぐりの歌」が流れる仕掛け。ワクワク気分が高まってきます。
ここから最初の目的地である「宮沢賢治記念館」までの距離は約1.5km。コミュニティバス「土沢線」も利用できますが、風が気持ちよい日だったので、ハイキングがてら徒歩で向かうことに。
旅人にとって「車を使わなくていい」のは、とてもありがたいこと。


道中には、地元の小学生らによるアートが展示されていたり、ふくろうの像が設置されていたりと、至るところ童話のモチーフが見つかります。まさに隠れたキャラクターを探すスタンプラリーのようで、歩けば歩くほど、新しい発見があるのでした。
さらに、こちら!

宮沢賢治記念館」へ登る階段のステップには、『雨ニモマケズ』の詩が1段に1文字ずつ貼られていました。「アーメーニーモーマーケーズ……」とまるで物語のページをめくるように、楽しく頂上をめざすことができるのです。

この長い階段はぜんぶで367段。少し体力がいりますが、のぼりきった先には、ごほうびのような、素晴らしい景色が待っていました。

花巻の美しい田園風景の奥に連なるのは、北上山地の前山。
そして「宮沢賢治記念館」へ。科学、芸術、宇宙、宗教、農業などにジャンルが分かれ、文学だけでなく、多岐にわたる賢治の造詣の深さを物語る、貴重な所蔵品や愛用品が見応えたっぷりに展示されています。
とりわけ心に響いたのは、賢治が初期に執筆した童話『手紙 一』の原稿。

「他者のために自分の命を捧げる」という自己犠牲がテーマであり、『銀河鉄道の夜』など、後の童話とも繋がる、原点とも言える作品です。
ただやっぱり素晴らしいのは、最も有名な詩『雨ニモマケズ』。改めて読むと、心がキュッと締め付けられます。写真は病床の中、黒い手帳に書き留められた直筆を再現したもの。

花巻の自然 2
緑の風が吹き抜ける、童話の世界へ
「宮沢賢治記念館」から階段を下りると、ポランの広場が。端正に植え、育てられたとりどりの草花に心弾ませながら、のんびりテクテク。まさに家族みんなでたのしめる、絶好のお散歩ルートです。


そんな明るく整備された緑地空間から少し脇道に外れると、うっそうとした原生林へ。日常からざわり、異世界に誘われるような感覚に陥ります。
森の道をしばらく散策していると、特別天然記念物にも指定されているニホンカモシカにひょっこり遭遇!

まるで童話の世界のような、素敵なハプニングでした。
さらに低い山を登っていくと、ひみつの絶景スポット、胡四王(こしおう)神社のイーハトーヴォ展望地に到着。

のどかで美しい田園風景は、まさに宮沢賢治が心の中に描き続けた理想郷、イーハトーブなのか!と胸が熱くなります。

田んぼの中の白い高架橋は、東北新幹線の線路。タイミングが合えば新幹線が走り抜けていく瞬間をカメラに収めることも可能。
さらに少し足を伸ばして「イギリス海岸」に行くという手も。

名前の由来は、賢治が学校教師だった時代、海を知らない生徒たちを連れて、北上川の河岸を「まるでイギリスの海岸のようだ」とつけたところから。景色が抑揚に富み、悠然とした流れが遠くまで見渡せる、それは神々しい眺めでした。
ランチスポットのおすすめはこちら! 新花巻駅近くのカフェレストラン「きゃびん」。どんぶりにそびえ立つ緑色の塊は抹茶ソフト……ではなく、なんと練りわさび。

名物メニューである「わさび冷麺」(1,100円)、盛岡ならではのコシがある麺と絶妙にからみ、さっぱりと爽快な味わい。わさびは一気に溶かさず、お好みの辛さに少しずつ崩しながら食べるのがおすすめ。また生レモンやお酢をスープに加えると、辛みがまろやかに。
ちなみにビーフシチューやとんかつなど、子ども向けのメニューもありました。
仕掛けと不思議がいっぱい
「宮沢賢治童話村」へ
そしていよいよ「イーハトーブフェスティバル」の会場でもある「宮沢賢治童話村」へ。
施設全体に、どこまでも整備された緑豊かな草原が広がります。

敷地はいくつかのエリアに分かれ、幻想的な空間を体験できる「賢治の学校」があったり、動物、植物、星、鳥、石など、作品に登場する要素を深く学べるログハウス「賢治の教室」があったり、妖精の小径やふくろうの小径といった遊歩道があったりとさまざま。

また夏から秋にかけては「童話村の森ライトアップ」が開催。森の中にクリスタルやステンドグラスのオブジェが輝き、撮影スポットとしてもおあつらえむきです。


夜のライトアップも素敵! 童話の中に入り込んだような幻想的な体験が味わえます。
大自然で体感するフェスティバル
いよいよ「イーハトーブフェスティバル」がはじまります。このイベントは賢治原作の映画「セロ弾きのゴーシュ」を監督したスタジオジブリの故・高畑勲監督が趣旨に賛同し、2014年よりスタート。多分野で活躍するクリエイターやアーティストら多彩なゲストが参加し、トーク、ライブ、映画など、2日間にわたってたっぷり繰り広げられる、なんとも盛りだくさんのプログラムで行われます。しかもすべて無料! というからおどろき。
1日目は、くらむような快晴! 光あふれるなか心までハレーションを起こし、現実味がなくなっていくような感覚に陥ります。

ステージのまわりには、まいたけ天そば、オムそばやカレーなどの食事系から、花巻産生乳を使った朝しぼりのジェラートなどの屋台も。

イーハトーヴ子ども合唱隊による、明るくもどこか切なくなるような歌声からはじまり、アーティストライブへ。2025年は、1日目が大橋トリオさん、2日目が日食なつこさん、ikireさんといった、すばらしくも豪華な面々が登場。


ピアノの音が大自然に響きわたり、砂糖水のように甘くとろけるメロディと歌詞、そして鳥の鳴き声がシンクロし、ダイレクトに心に響きます。
暑かった夏が終わりに近づくようすを噛み締めつつ、生きててよかったー!と祝福したくなるようなひとときでした。

テントの影が森をふちどり、木がリズムをとっているかのようにゆらいでいます。
スペシャルトークは、1日目は株式会社スタジオジブリ代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫さん、2日目は映画監督の岩井俊二さんが登壇。聞き手は宮沢賢治記念館学芸員の牛崎敏哉さんが務め、宮沢賢治にまつわる深い洞察が行われていました。



あの映画の裏話や、賢治とジブリの意外な関係など、ここでしか聞けないひみつの逸話が続々と披露され、なんとも得した気分。

大きな雲が現れ、次第に光が斜めに差し込むと、にわかに赤く染まりはじめます。風が気だるそうに吹いたかと思うと、一気にあたりが暗くなりました。映画上映がはじまります。

1日目は劇場アニメ『ルックバック』、2日目は岩井俊二監督による初期の名作 『ラブレター』が上映。
野外ならではの臨場感や開放感、観客たちも熱心に映画の世界にどっぷり浸っています。
大自然の心地よい風と、胸を打つ美しい音楽、そして宮沢賢治が遺した言葉の数々。そして映画の余韻に浸りながら見上げた花巻の夜空には、賢治が見上げたのと同じ、満天の星が広がっている気がしました。
こんなふうに、日常を忘れさせてくれる特別で幻想的な体験が詰まっている花巻で、「イーハトーブフェスティバル」とともに、宮沢賢治の愛した理想郷を巡る旅。
心温まる夏の思い出を、ここでぜひ味わってください。
INFORMATION
イーハトーブフェスティバル2026
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text:BOOKLUCK
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