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:【今見たいアート案内】 もうすぐ会期終了! 見逃せない展覧会5選
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もうすぐ終了してしまう、注目の展覧会を見逃していませんか? 『リンネル』のアート&イベント連載ページを担当しているライター赤木真弓さんおすすめの、アート&イベントを厳選してご紹介します。
【今見たいアート案内】 もうすぐ会期終了! 見逃せない展覧会5選
1. ルイーズ・ブルジョワ展
地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ
■ルイーズ・ブルジョワの98年の人生と、アーティストとしての活動

自身の版画作品《聖セバスティアヌス》(1992年)の前に立つルイーズ・ブルジョワ。ブルックリンのスタジオにて。1993年 撮影:Philipp Hugues Bonan 画像提供:イーストン財団(ニューヨーク)
20世紀を代表する最も重要なアーティストの一人、ルイーズ・ブルジョワ。98歳で他界するまで制作を続け、晩年にキャリアの代表作ともいえる作品を多く発表したブルジョワの、日本では27年ぶり、国内最大規模の個展が開催中です。
ブルジョワは、1911年パリ生まれ。1932年にソルボンヌ大学数学科に入学するも、母を亡くした悲しみからアーティストとしてのキャリアを志望。1938年、アメリカ人美術史家との結婚を機にニューヨークに移住し、1940年代半ばから作品を発表します。1982年には女性彫刻家として初となる、ニューヨーク近代美術館での大規模個展の開催。70年にわたるキャリアのなかで、インスタレーション、彫刻、ドローイング、絵画などさまざまなメディアを用いながら、男性と女性、受動と能動、具象と抽象、意識と無意識など、二項対立に潜む緊張関係を探求し、対極にあるこれらの概念を作品のなかに共存させてきました。

左から《蜘蛛》 1997年 鋼、タペストリー、木、ガラス、布、ゴム、銀、金、骨 449.6×665.5×518.2cm 撮影:Maximilian Geuter, 《トピアリーIV》 1999年 鋼、布、ビーズ、木 68.6×53.3×43.2cm 撮影:Christopher Burke ともにルイーズ・ブルジョワ、© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York

ルイーズ・ブルジョワ《無題(地獄から帰ってきたところ)》1996年 刺繍、ハンカチ 49.5×45.7cm 撮影:Christopher Burke © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York
本展は、ブルジョワの創造の源であった、家族との関係をもとにした3つの章から構成した、約100点の作品を一挙に公開。自身や家族の衣服など、彼女の人生に関わる布を用いた作品など約8割が、日本初公開の作品となるのも注目です。

ルイーズ・ブルジョワ《家出娘》 1938年頃 油彩、木炭、鉛筆、キャンバス 61×38.1cm 撮影:Christopher Burke © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York
セクシュアリティやジェンダー、身体をモチーフにしたパフォーマンスや彫刻が、フェミニズムの文脈でも高く評価されているブルジョワ。幼少期に経験した複雑で、ときにトラウマ的な出来事をインスピレーションの源としてきたという作品からは、ブラックユーモアのセンスとともに、生きることへの強い意志も感じます。私たちが直面している、戦争や自然災害など、「地獄」のような苦しみを克服するヒントを与えてくれるかもしれません。
『ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ』
開催中~1月19日(日)/森美術館/10:00~22:00 ※入館は閉館30分前まで/会期中無休/一般¥2,000/https://www.mori.art.museum/jp/
2. 西川勝人 静寂の響き
■光と陰影を追求した、静謐さに浸る展覧会

西川勝人《根》1994年 作家蔵 ©Katsuhito Nishikawa 2024
ドイツを拠点に光と闇、その間の漠とした陰影に心を配り、多様な技法を用いた作品を手がける、西川勝人さんの国内美術館では初となる回顧展。
抽象的なフォルムをもつ白い彫刻は、木や石膏を用いた簡素な構造ながら、表面に淡い陰影を宿し、周囲の光や音さえもそっと吸い込んでしまうように、ただ静かにあります。写真や絵画など、彫刻以外の制作においても同じで、これは変わることのない最大の魅力です。

西川勝人《蓮》1998–2000年 作家蔵 ©Katsuhito Nishikawa 2024

西川勝人《無題》1986年 作家蔵 ©Katsuhito Nishikawa 2024
活動初期にあたる1980年代から最新作まで、彫刻、写真、絵画、インスタレーションなど約70点を通して、静けさを保持し続ける西川作品の美学に触れます。
残念ながら3月31日をもって休館予定の美しい美術館と庭園に、ぜひ足を運びたい。
『西川勝人 静寂の響き』
開催中~1月26日(日)/DIC川村記念美術館/9:30~17:00 ※入館は閉館30分前まで/月曜休館/一般¥1,800/https://kawamura-museum.dic.co.jp
3. アレック・ソス 部屋についての部屋
■部屋をテーマに、これまでの作品を編み直す

アレック・ソス《Anna, Kentfield, California》〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉より 2017年 東京都写真美術館蔵 ⓒAlec Soth
国際的な写真家集団マグナム・フォトの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材にした作品で、世界的に高い評価を受けてきたアレック・ソス。
初めて出版されたシリーズであり、初期を代表する〈Sleeping by the Mississippi〉から、最新作〈Advice for Young Artists〉まで、約60点の作品を6つのセクションで紹介。

アレック・ソス《Crystal, Easter, New Orleans, Louisiana》〈Sleeping by the Mississippi〉より 2002年 作家蔵 ⓒAlec Soth

アレック・ソス《Two Towels》〈Niagara〉より 2004年 作家蔵 ⓒAlec Soth
ソスのキャリアにおいてひとつの転換点となった〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉は、アメリカの詩人、ウォレス・スティーヴンズの詩「灰色の部屋(Gray Room)」の一節からタイトルがとられたもの。初期からアメリカ国内を車で旅し、風景や出会った人々を大判カメラで撮影してきたソスが、舞踏家・振付家のアンナ・ハルプリンや、小説家のハニヤ・ヤナギハラなど世界各地のさまざまな人々を訪ね、その人が日々を過ごす部屋の中で、ポートレイトや個人的な持ち物を撮影したシリーズが、本展のきっかけに。
30年に及ぶソスの歩みを単に振り返るのではなく、選ばれた出品作品のほぼすべてが屋内で撮影されているように、「部屋」をテーマにこれまでのソスの作品を編み直す展覧会です。
『アレック・ソス 部屋についての部屋』
開催中~1月19日(日)/東京都写真美術館 2階展示室/10:00~18:00 ※入館は閉館30分前まで、木・金曜は20:00まで/月曜休館/一般¥800/https://topmuseum.jp
4. 再開館記念 「不在」ートゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル
■「不在」から考える、二人のアーティストの表現した「存在」

左からアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《『イヴェット・ギルベール』表紙》、1894年、リトグラフ/紙、三菱一号館美術館蔵、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《メイ・ミルトン》、1895年、リトグラフ/紙、三菱一号館美術館蔵
ポスター画家として高く評価されている、フランスのアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックと、現代フランスを代表するアーティストのソフィ・カル。二人のアーティストが時代を超え、「不在」という同じテーマでゆるやかにつながる展覧会が開催中です。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《『彼女たち』 行水の女―たらい》、1896年、リトグラフ/紙、三菱一号館美術館蔵
1864年に名門伯爵家に生まれたロートレックは、1891年に初めて手がけたポスター《ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ》で、一躍人気画家に。パリ・モンマルトルの歌手や芸人、娼婦など、素早いデッサンと大胆な構図で生き生きと描き、ポスター制作を通して習得したリトグラフの技法を用いた、多彩な版画作品や油彩画も数多く残しました。

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《54号室の女船客》、1896年、リトグラフ/紙、三菱一号館美術館蔵
一方、1953年にパリに生まれたソフィ・カルは、自伝的な作品をまとめた《本当の話》や、自身の失恋体験による痛みとその治癒を主題とした《限局性激痛》など、テキストや写真、映像などを組み合わせた作品で知られる、コンセプチュアル・アーティスト。見ることとは何かを追求した『盲目の人々』『最後に見たもの』などの作品を通して、美術の根幹に関わる視覚や認識、「喪失」や「不在」についても考察しています。

ソフィ・カル氏ポートレート Sophie Calle Photography : Yves Géant
本展は、そんなソフィ・カルが提案した「不在」がテーマ。三菱一号館美術館のコレクションを含む、136点のロートレックのポスターや版画などの作品を展示。描かれる人物の不在や、色彩の不在など、さまざまな「不在」から作品を見ていきます。さらにソフィ・カルは、多くの作品に通底する「不在」をテーマに、代表的なシリーズ「なぜなら」をはじめ、多様な創作活動を紹介。「不在」を通して、その表裏の関係にある「存在」にまで思いを巡らせながら見ることができそうです。
再開館記念 「不在」ートゥールーズ=ロートレックとソフィ・カル
開催中~1月26日(日)/三菱一号館美術館/10:00~18:00 ※入館は閉館30分前まで。金曜と会期最終週平日、第2水曜は20:00まで/月曜休館(ただし1月20日〈月〉は開館)/一般¥2,300ほか/https://mimt.jp/ex/LS2024
特別展『志村ふくみ 100歳記念 ー《秋霞》から《野の果て》までー』
■70年にわたって創りあげた、芸術性の高い染織の世界

志村ふくみ《秋霞》1958年 紬織/絹糸、藍 個人蔵(通期展示)
人間国宝の染織家・志村ふくみさんの100歳を記念した回顧展。
31歳で染織の世界に入り、紬織りを独自の感性と想像力で芸術性の高い作品として発展させた芸術思想と、自然にある無数の色を抽出し、紡いだ糸を染め織るという、人と自然が共生する営みに一生を捧げる仕事を紹介します。

志村ふくみ《風露》平成12年(2000)紬織/絹糸、紅花、藍、刈安、紫根 個人蔵(後期展示)
自身が「はじめての着物」とも述べ、染色家としての原点ともいえる代表作《秋霞》や、自らが書いた童話に兄の小野元衞が絵を描いた手稿《野の果て》のほか、2000年以降の代表作である、切継と呼ばれる小さな布片を接ぎ合わせる技法で、紬の端切れをつなぎ合わせて着物に仕立てた作品《風露》、初公開となる石牟礼道子さんの最後の著作を原作とする新作能「沖宮」の衣裳まで。約60の作品を見ることができます。

文:志村ふくみ・画:小野元衞《野の果て》(手稿) 1943年 個人蔵(通期展示)

志村ふくみ監修 制作:都機工房 小袖《Francesco》2020年 平織/絹糸、臭木、藍 個人蔵(後期展示)
特別展『志村ふくみ 100歳記念 ー《秋霞》から《野の果て》までー』
開催中~1月19日(日)/大倉集古館/10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで、金曜は19:00まで/月曜休館/一般¥1,500/https://www.shukokan.org
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text & edit:Mayumi Akagi
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