CULTURE

こっちのけんとさん「暮らしに優しい視点を与える音楽を作り続けたい」/『けっかおーらい EP』インタビュー こっちのけんとさん「暮らしに優しい視点を与える音楽を作り続けたい」/『けっかおーらい EP』インタビュー

こっちのけんとさんに、EP『けっかおーらい EP』インタビュー!

2024年にリリースした楽曲「はいよろこんで」で、瞬く間に幅広い世代から親しまれる存在になった「緑のマルチアーチスト」、こっちのけんとさん。ご自身初となるCD作品は、話題のアニメテーマ曲などを収録した聴きごたえと楽しさが満載の内容になっていると同時に、撮影中にはファンの子どもたちと気軽に交流するなど、その優しい人柄も伝わってきます。

目次
  1. 「胸を張って言えることを楽曲に」
  2. 「自分にとって初がつまったCD作品」
  3. 「部屋の状態は現在の心境を示す」
  4. 話題アニメテーマ曲収録、初のCD作品『けっかおーらい EP』
  5. PROFILE

「胸を張って言えることを楽曲に」

━━昨年リリースされた楽曲「はいよろこんで」が、SNSをきっかけに世代を超えるヒットを記録しました。大忙しの一年だったのでは?

こっちのけんとさん(以下敬称略) あっという間のようで、長かった感覚がありますね。忙しくしている瞬間は早く過ぎている感覚があったのですが、いま振り返るとめっちゃ長いなっていうか。濃い時間を過ごすことができたなと思っています。

━━そうすると暮らしにも変化があったのでは?

こっちのけんと 実は「はいよろこんで」のリリース直前に入籍もしまして、両家の顔合わせとかいろんなことをしなければいけない状況のなか、この楽曲が注目され始めたという流れだったので、大きく変わったというか。自分の名札、背負う看板みたいなものが増えた感じでしたね。でも、生活自体はすでに同棲をしていたのでそこの変化は少なかったのですが、とにかく公私ともに外に出る機会が増えました。

━━また、音楽に対する向き合いかたにも変化があったのでは?

こっちのけんと 「はいよろこんで」をリリースした直後、いろんなヒット曲を耳にするようになりまして〈こういう部分で流行らせようとしているんだな〉とか、リスナーとは異なる視点で音楽を精査するようになってしまいました。でも、そのあとに曲を制作されたミュージシャンの方々とお会いし会話するようになり、改めて耳にするとそのときにはわからなかったことが伝わってきたというか。作り手が本当に言いたいのはここなんだろうなみたいなのが見えるようになって、よりその楽曲を楽しめるようになりましたね。これも本来の音楽との向き合いかたではないかもしれませんが、多くの人に向けて作るキャッチーなフレーズと自分が本当に伝えたいことのバランスをどうまとめるのか?というクリエイター力に注目するようになってきましたね。

小学生のファンにもやさしく対応するこっちのけんとさん。
撮影中に小学生の男の子たちが紙とペンを持って集まってきたら、優しく「サイン書こうか」と声をかけていたこっちのけんとさん。ファン層の幅広さもうかがえます。

━━今回のアニメ『ヴィジランテ -僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-』のテーマ曲として制作された「けっかおーらい」も、アニメの世界、また世の中のニーズと、ご自身の作りたい音をバランスよく表現されたものですか?

こっちのけんと 今回、初めてアニメのテーマ曲を制作させていただくことになったのですが、その世界にフィットしているかどうかわからないけれど、自分が思う信念を貫こうと思って取り組みました。また、アニメの登場キャラクターも、それがどういう結果をもたらすかわからないけれど、自分が思う正義を追求していますし。だから、誰かに相談することをせず、自分で調べて現在の段階で正しいと思える解釈を表現しようと思いましたね。

━━楽曲では、「自分のためじゃなくて誰かのために生きよう、一生懸命生きようとしている人こそがヒーロー」という思いを表現されているそうですね。そういう思いは日々の暮らしで常に考えたり、感じていることなのですか?

こっちのけんと 「はいよろこんで」をリリースする前は、職業として世界の平和を守る人みたいなイメージを持っていました。でも、さまざまな人々との出会いや経験を通じて、それって職業ではなくて、誰しもにある素質なのではないかなと感じるようになったというか。自分のためではなく、誰かのために身を張れる力を持っている人すべてがヒーローという思いが強くなっていますね。

━━結婚という暮らしの変化が大きく影響されているのでしょうか?

こっちのけんと 大きいですね。こうやって表舞台に出て活動をスタートさせたことで、家族などの身内にも何かしらの影響が起こってしまうと思う。だから、自分のうかつな発言や行動によって、彼らの日常に迷惑をかけてはいけない。自分が胸を張って伝えられるもの・ことだけを届けなければいけないという思いが強くなっていまして。だから歌詞に関しては、かなり慎重に取り組んで制作しましたね。

━━また、同時にリスナーのみなさんへの力強いメッセージも聴き取ることができました。

こっちのけんと 自分が思っていたことを過去や未来の自分に向けて手紙を書く感覚で曲を作っているのですが、なぜかそれに共感をしていただける方々が増えているという感覚でして。だから、わがままかもしれないですけど、これまでどおり自分の感じたことを音楽にしていきたいと思っています。もちろん、たくさんの人々に楽しんでいただける作品にしたいという思いもありますが。

━━SNSや動画サイトのコメント欄を見ていると、たくさんの方々の楽曲に対する意見が投稿されています。いろんな解釈ができる深みのある楽曲なのだなと感じました。

こっちのけんと 確かに、深読みしてくださる人もいるし、僕もそこを狙って書いている部分もあります(笑)。「けっかおーらい」は、3分くらいしかない短さのなかで、さまざまな展開があるおかげで、言いたいことの8割ぐらいは伝えられていなくて。その表現できなかった部分を、みなさんがコメントや反響などを通じて埋めてくれている。それって、アーティストとしてとても光栄なことなのです。

━━今の時代って、リスナーのコメントも含めてエンターテインメントなんだなって思いながら、眺めています。また、アレンジに関してはいかがですか? アニメの世界を連想させながらも、これまでにないスケールの大きさを感じるものになっていると思いますが。

こっちのけんと 最初に僕がイントロのアイデアを伝えて、それを元にアレンジャーのGRPさんに制作していただいているのですが、今回は想像以上の完璧な仕上がり。アニメの世界観を大切にしながら、物語がはじまっていく高揚感、またライブ映えもするものにもなっていて、素晴らしいアレンジになっています。

━━その壮大なアレンジにのるヴォーカルも、表情が多彩でひきこまれました。

こっちのけんと アニメの主人公、そのまわりにいるキャラクター、さらに自分の目線も交えた楽曲にしたいと思いました。なので、ラップのパートでは声のトーンを変えたり、2番では自分のキャラクターをいかした歌いかたに変えるみたいな。どの目線で歌っているのかをじっくり考えながら、歌っています。

━━また、Aメロの「ポップ・ダンス」も話題になっていますね。

こっちのけんと これは、アニメのオープニング映像を制作してくださったクリエイターさんが考えてくださったものを、踊らせていただいているだけでして(苦笑)。人間ではなかなか再現が難しい動きもあるので、ちょっとアレンジはしていますが、踊っていると、楽しい気分になれますよね。

━━「はいよろこんで」もそうでしたが、すぐにマネできそうな雰囲気なのですが、実際に踊ってみると難しい、キレのある振り付けですよね。

こっちのけんと やれるんじゃん、と思ってやりだしたら意外とできないみたいな(笑)。ダンスを含め、見せかたというかパフォーマンスに関しては、自分の表現において大切なこと。まだまだ納得のいくものにはなっていないのですが、今後さらに磨きをかけていけたらと思っています。

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