CULTURE
:平原綾香さん「音楽がなりたい<私>に戻してくれる」/アルバム『my Orchestra!』インタビュー
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:心が洗われるような美しい歌を届け、あらゆる人を魅了させている平原綾香さん。ご自身初となる全編オーケストラと共演したアルバムが完成しました。現在も日本中に感動を届ける「Jupiter」を筆頭に、キャリアを代表する楽曲の数々が、壮大なサウンドで再構築。平原さんの歌声の輝きを感じられると同時に、贅沢なオーケストラサウンドを堪能できる聴きごたえのある仕上がりになりました。
「Jupiter」は自分の守護神のような存在

━━平原さんにとってキャリア初となるオーケストラ・アルバムが完成しました。
平原綾香さん(以下平原) これまで、オーケストラとは数多く共演させていただいてきましたが、フルオケでのレコーディングは初めてです。あるとき、東京フィルハーモニー交響楽団のプロデューサーさんから「一緒にアルバムを作りませんか」とお声かけいただいたのがきっかけで実現しました。
━━今回はコンサートホールでの一発録り。事前に指揮者の渡辺俊幸さんをはじめ交響楽団のみなさんとは綿密な打ち合わせを?
平原 11曲を2日でレコーディングしました。凄腕のミュージシャンだからこそ出来ることです。渡辺俊幸さんとは何度も共演しており、私がやりたいことを理解してくださっているので、私は歌に集中出来ましたし、とてもスムーズなレコーディングでした。
━━確かに、オーケストラの音に身を任せて自由に歌う平原さんの姿が浮かんできました。
平原 アルバムをじっくり聴いていただきたいです。本当に素晴らしい演奏です。
━━また、オーケストラの壮大な音にも負けない、平原さんの表情豊かな歌声にも圧倒されました。
平原 私の父がサックス・プレイヤー(平原まこと氏)で、デビュー当時、初めてオーケストラと共演する時に、父から「自分がオーケストラを引っ張ろうなんて思わないで、みんなの音に身を任せて漂うように歌ってごらん。ファーストバイオリンの音程をよく聴いてね」とアドバイスをもらい、今でもその教えを大切にしています。父は5年前に天国に引っ越したので、今では父の教えやアドバイスを聞くことが出来ません。なので、今まで教わったことを大切にして歌おうと心がけました。また、最近共演したオーケストラの楽団の中には、以前父と共演したことがある方もいらっしゃって「まことさんだったら、どう吹くだろうと、いつも考えながら演奏しています」と話してくださいました。会えなくても父の存在を感じる瞬間がたくさんあり、泣きながらレコーディングしました。
━━お父様の面影を感じながらの制作になったのですね。
平原 父を亡くしたという経験をしたことで、今まで何気なく歌っていたフレーズに心を動かされることも多く<こんなに悲しい曲だったんだ>と気付かされることもありました。また、父と渡辺俊幸さんは昔から交流が深く、「キミへ」では、「まことさんを想って書いた」というオリジナルにはないアレンジが存在します。そこには、俊幸さんの思いが溢れているようで、涙なくしては聴くことが出来ない素晴らしいオーケストラアレンジに仕上げてくださいました。
━━本当に、曲ごとに深い思いが伝わってくる作品になっていますね。そのなかでも、冒頭を飾る「Jupiter 2026」は、オリジナルの雰囲気を大切にしながらも、イントロを含めより壮大な景色を描いていますね。
平原 原曲であるホルストの組曲『惑星』より「木星」の冒頭、アレグロ・ジオーソから始まるのですが、実は当初は、レコーディング音源には必要ないのでは?と思っていたんです。最近のヒット曲は、イントロや間奏を飛ばして聴く人がいると聞いたことがあるので。でも、俊幸さんからは「絶対に入れたほうがいいよ」と。結果的に、オーケストラアルバムの1曲目として、新しいステージの幕開けのようなイメージになったので、やっぱり残して良かったと思いました。
━━改めて「Jupiter」はどんな楽曲だと感じましたか?
平原 私にとってのデビュー曲であり、楽しい時もつらい時も、いつもそばにいてくれた守護神のような存在です。あの頃は大学生活と音楽活動を両立させていて、今となってはよく乗り越えたな、と思うほど大変な毎日でしたが、「Jupiter」が繋いでくれたご縁で、素晴らしい人たちに出会うことが出来ました。たとえば、新潟県中越地震で傷ついた方々が避難所で聴いてくださり、「長岡まつり大花火大会」では「Jupiter」に合わせて「復興祈願花火フェニックス」が打ち上げられ、復興と平和への祈りを込めて今でも毎年打ち上げられており、今年で21年目。私は今年でデビューして23年。共に歩んできた気持ちです。
暮らしによりそうオーケストラ音楽

━━また、本作には公私ともに親交が深いというプロフィギュアスケーター荒川静香さんのために書き下ろした新曲「Friends on Ice」も収録されています。
平原 荒川静香さんとの出会いは、2006年のイタリアトリノで開催された冬季オリンピックのNHK放送テーマソングを歌わせていただいたことがきっかけです。その年に出場した紅白歌合戦の応援として来てくださり、そのとき初めてお会いしました。その後、荒川静香さんや高橋大輔さんが出演するアイスショー『氷艶 hyoen 2019 -月光かりの如く-』に私も出演することになり、そこで仲良くなりました。このショーでは、人生で初めて歌いながら滑るという挑戦をしたのですが、慣れない私にスケートを教えてくださったり、スケート靴をプレゼントしてくださったりと、たくさん支えてもらいました。今では大親友といえる存在になり、この間はリモート飲み会をふたりで開催したほどです(笑)。
━━リモート飲み会って、今では懐かしい言葉ですね(笑)。
平原 私はお酒が弱いので、ちょびっとしか飲めませんでしたが(笑)。そういった交流を通じて、荒川静香さんが主催しているアイスショーが今年20年を迎えるとのことで、ぴったりの曲を探しているという話を聞きました。ちょうど本作で新曲を収録するかどうかを話し合っていたタイミングだったので「じゃあ、私が作る!」と、自ら申し出て制作したのが「Friends on Ice」です。彼女は強そうに見えるのですが、すごく繊細で、誰よりも周囲のことを考えて、バランスを取っている気遣いの人。私も以前は、強そうなイメージというか、つんつんした印象を持たれて悩んでいた時期もあったので、彼女の気持ちを理解できる部分があったんですよね。ときどき、弱音を吐く彼女に対して、素晴らしい滑りをずっと観ていたいから、「まだ溶けないで」=「まだスケートをやめないで」と願いを込めました。
━━平原さんの心情も投影されている部分があるのですね。
平原 自信が持てない時に、どんな言葉や喝采をいただいても、本当に大丈夫だったかなって不安になることがあって。そんなときに「どうだった?」って母に聞くんです。すると「よかったよ!」と言われて初めてホッとする。まだまだ大人になりきれていない自分の弱い部分も、この曲には投影されているのかなって思います。
━━また、本作のボーナス・トラックでは松任谷正隆さんがプロデュースされた「夢のあとに」も収録されています。これは平原さんの声を何層にもかさねた<ひとりオーケストラ>のユニークな楽曲。
平原 正隆さんがアレンジしてくださったのですが、ハーモニーが入り組んでいて、途中段階は不協和音に聞こえる箇所があるんですが、最終的にはこの世のものとは思えない美しいハーモニーになっていて、圧倒されました。正隆さん、やはりただものではありません!この楽曲はぜひ、イヤホンやヘッドホンで聴いてください。異次元へいざなわれる感覚を味わえると思います。
━━アート作品のような仕上がりですよね。また、この楽曲はユーミンこと松任谷由実さんが意訳詞を担当。
平原 2024年から2025年にかけて行ったロングランツアー「The Swinging Classics!」で共同演出プロデュースをしてくださった正隆さんから「由実さんが1曲書きたいって言ってるんだけど、いいかな?」とお尋ねがあり、夢のような申し出に思わず飛び上がりました。それで生まれたのがこの楽曲です。最初、歌詞に目を通した瞬間、この美しさをが理解できるまで何年かかるだろうと思いました。すごく綺麗な海ってとても深いじゃないですか。私はきっとまだ、その上澄みくらいしかわかっていないんじゃないかって。その深さまでに、いつたどりつけるのだろう?という気持ちになりました。おふたりの深い愛を感じた楽曲です。
━━とても贅沢な音楽の贈り物という印象です。ほかの楽曲も、暮らしに多幸感をもたらしてくれそうな作品ですね。耳から摂取できる美容液みたいな。
平原 その通りです!また、アルバム・タイトルにもこめているのですが<私にとってのオーケストラ>という言葉が、いつしか聴いてくださるみなさんにとっての<マイ・オーケストラ>アルバムになっていただけたら。つまりこれは、私のオーケストラ作品ではなく、みなさんのためのアルバムなのです。
━━━また、この作品をきっかけに実際に生のオーケストラ・サウンドを体感したくなる人も多いはず。10月からスタートする全国ツアーも楽しみです。
平原 絶対に会場に足を運んでください!アルバムとは異なる感動を味わえますので。各地のオーケストラのみなさまとのコラボレーションでお届けするので、それぞれの場所で異なる感動を味わっていただけるのではと思います。
━━今回のオーケストラ・アルバムの完成をきっかけに、今後の活動に対するビジョンは見えましたか?
平原 渡辺俊幸さんがおっしゃっていたのですが、世界的にみても、現代において歌手が全曲フルオーケストラでレコーディングしたアルバムを出すのは、なかなかないことだ、と。スマートフォンで手軽に音楽を聴くことができるようになり、デジタル化が進んでも、生音の良さや、オーケストラの響きを忘れないように伝えていきたい。みんなで手を取り合って、音楽を守っていかなきゃっていう、そんな思いが強くなりました。
オーガニックにこだわる暮らし

━━ところで、リンネルは暮らしのメディアになりますので、最近の平原さんの日常のこだわりみたいなものも、ぜひおうかがいしたいのですが。
平原 できるだけオーガニックのものにこだわるようにしています。昔から母がオーガニックにこだわって子育てしてくれた影響もあるのですが、着るものも、食べ物も、出来るだけ身体に良いものにしたい。洋服も、いい素材を着ると気持ちいいだけじゃなくて、素材から得られる影響が少なからずあって。1週間に1 回でもいいから、自然素材・オーガニックのものを身につけなさいって、SNSでインド人のおじさんが言っていましたし(笑)。私もそれを見習っています。食品も、無農薬のものを母が取り寄せています。
━━何かハマって取り寄せてる食材はありますか?
平原 やっぱり、無農薬のお野菜ですね。私は、お肉もお魚も、なんでも好きですが、何が1番好きかと言われたらお野菜なんです。無農薬で育てるのは、とても大変なことだと思いますので、農家さんに感謝しながらいただいています。
━━では、ご自身で身体にいい食事を作られるのですか?
平原 ふだんは母親にまかせっきりです。お料理上手な母の手料理が美味しすぎて。でも、最近は自分でお料理をするようになったんですよ。簡単なものから始めています。あと、この間は人生で初めて枝豆を茹でました。最近の自分の中のヒットは「冷やし麻婆豆腐」です(笑)。
━━シンプルな料理が実はいちばん難しいですからね。これで料理の才能が開眼されたのかも?
平原 今まで美味しい手作りごはんを食べて来たので、味付けだけは得意です(笑)。やればできる子!と自分を励まして、がんばっています。
━━では、身体や精神的な不調を感じたとき、がんばりが効かないときは、どう対処されていますか?
平原 定期的にマッサージに行っています。本番前は、自分でもマッサージします。できるだけ循環を良くして、酸化ストレスをなくす暮らしを心がけています。
━━なるほど。
平原 私はステージに立って歌を歌うと、体調が良くなるんです。傾いていた心が整うような感じ。なりたい自分になれる場所だからなのかもしれません。寝不足でも、落ち込んでいても、マイクの前に立つと元気になれる。なりたい自分になれる場所、自分らしくいられる瞬間や時間を少しでも持つことができたら、自然と心も身体も健康でいられるのかもしれません。
自身初のオーケストラ・アルバム
『my Orchestra!』

平原綾香『my Orchestra!』/¥3,850
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渡辺俊幸氏の総指揮により、東京フィルハーモニー交響楽団との共演となる平原さん初のオーケストラ・アルバム。デビュー曲を再構築した「Jupiter 2026」を筆頭に、ドラマの主題歌となった「明日」や「おひさま~大切なあなたへ」、26年に開催されたアイススケートショー『The MELT -Cross of Roots-』で話題となった「虹の向こうへ」、今年プロ転向から20年の節目となる荒川静香さんのために書き下ろした新曲「Friends on Ice」。さらに、ボーナストラックには松任谷正隆さんプロデュース、松任谷由実さんが意訳詞を手がけた「夢のあとに」を収録。平原さんの表現力豊かな歌声と、オーケストラの荘厳な音の調べがもたらすハーモニーには、世界にここでしかない美しさがあふれます。
PROFILE

ひらはら・あやか/2003年にシングル「Jupiter」でデビュー。さまざまな音楽賞を獲得するなどミュージシャンとして活躍するのはもちろん、ミュージカル、声優、ドラマ、映画の吹き替えなど多方面で才能を発揮。今秋10月3日の埼玉公演を皮切りにオーケストラツアー「平原綾香 Concert Tour 2026 ~ my Orchestra! ~」がスタート。10月11、12日は、東京・Bunkamura オーチャードホールにて公演。24日は愛知公演、11月8日は宮城公演、11月14日は神戸、15日は大阪公演。11月23日には、平原さんの音楽の節目を刻んできた特別な場所 、母校である洗足学園・前田ホールにて公演。最新情報はオフィシャル・サイトにて。https://www.camp-a-ya.com/
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photograph: Miho Kakuta styling: mariko hair & make-Up: Hiromi text: Takahisa Matsunaga
※2026年9月20日発売のリンネル11月号では、Webとは異なる写真とインタビュー記事を公開予定です。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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