脳機能の低下は、高齢者の話だけではありません。マルチタスクやスマホによる情報過多によって日々の脳疲労が激しい若い世代も注意が必要。脳科学者の西 剛志先生に、仕事中に実践できる脳の若返り習慣を3つ教えてもらいました。少しでも意識すれば、きっと変化を感じられるはず。
教えてくれた 脳科学者・ 西 剛志先生 profile
仕事をしながら、脳を若返らせる3つの習慣
西先生によると、若い働き世代の間で脳の認知機能の低下が増えてきているそう。その背景には、仕事を持つ忙しい女性が増え、常に複数のことを同時にこなすマルチタスクを強いられている状態になっているという現状が。また、仕事を持つ女性が出産すると非常に負荷の高いマルチタスクが長期間続くことになり、脳の認知機能が下がって、集中力が続かないなどの支障をきたしてしまうそう。
さらに、在宅勤務による運動不足がその一員になっている可能性も指摘されているそう。ある研究によると、人は移動することで脳の海馬が活性化されて主観的幸福度が高まる一方、同じ場所に居続けると脳が刺激を感じなくなり、ボーッとして認知機能が下がるといいます。
少しでも仕事中の脳の負担を和らげるために、仕事中にできる習慣を教えてもらいました。
【習慣1】マルチタスクを抱えたら2個に集中するか、
時間を区切ってひとつずつ取り組む
ふたつの仕事を同時進行するなど、軽度なマルチタスクは脳の認知機能が上がるという論文もありますが、常に複数の仕事を抱えている、仕事と育児の両立などのハードなマルチタスクが続くと、ストレスがかかり脳の老化を早めます。
疲れている、判断力が衰えてきたと感じるなら、午前はAの仕事に専念、午後からBの仕事にかかるなど、時間を区切るのがおすすめ。違う仕事の書類は視界に入れないようにするなど、切り替え方法を工夫して。
【習慣2】仕事は細かく休憩をはさんで脳疲労を阻止
脳に長時間の負荷をかけ続けると“ストレスホルモン”ともいわれるコルチゾールがたまり、脳疲労に。 2時間通しで作業するより、30分ごとに休憩をはさんで4回に分けて作業するほうが効率的です。
また、ボーッとしている時間は、さぼっているようでいて、実は脳はフル回転で得た情報を整理(デフォルトモードネットワーク)しています。仕事の休憩時間にスマホをいじり続けていると、情報整理が行われず脳の疲労がたまるので注意しましょう。
【習慣3】スマートフォンの通知をやめ、仕事中は机上に置かない
スマホに来る通知はそれだけで脳のストレスになるため、集中したいときは必ず通知をオフに。
また、スマートフォンを机上に置くと試験結果が下がるというデータがあるので、仕事中は目に入らないところに置くのがよいでしょう。スマホの登場により、人は膨大な情報が得られるようになりました。しかし一方で試行錯誤の機会が少なくなり、「脳の短絡化」=老化が起こっています。ときにはデジタルデトックスを行うことも大切です。
こちらもチェック!
illustration:Naomi Mori text:Ema Tanaka web edit:Riho Abe
リンネル2023年9月号より
※画像・イラスト・文章の無断転載はご遠慮ください
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