【内田彩仍さん連載：明日もいい日になりますように】 「第4回 書くことは今の自分と向き合うこと」

内田彩仍さん Profile

あっという間に９月も終盤。中秋の名月の頃となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。この頃の月は、いつもより大きく感じてずっと眺めていたくなります。

毎年この頃になると白玉団子を作るのですが、つい、食べ切れないほど作ってしまい、冷凍保存しておくというのを繰り返しています。でも、作り立てがやっぱり美味しくて、ゆであずきを添えて食べるのが好きです。

ここのところ、毎年秋に新刊を出していることもあって、今が一年で最も忙しい時期を過ごしています。
本の撮影が終わり、７月半ばから書き進めてきた原稿もちょうど形になり、この頃が本の校了作業中なのです。
本好きな私は、本作りも大切にしようと思うから、この時間が結構好きで、必要な時間になっています。

10月26日に、『変えること変わらないこと』（主婦と生活社）という新刊が発売になります。この本では、もうすぐ59歳になり、来年60代を迎えるにあたっての下準備をしている私の日常を書き留めました。
人生後半は、頑張り過ぎず、なるべく気楽に、前向きに、そして機嫌よく。できるならいつも笑って毎日を送れるよう、備えをしておきたいと思っています。

そう思いながら原稿の最終チェックをしていると、なんとなくしっくりこない言葉や文字が見えてきます。
「もうこれで直せない」と、感じるからだと思うのですが、今までは気づかなかった、本当の自分が見えてきて、いつも「自分を大きくも見せず、小さくも見せず」と思っているので、今の自分と向き合いながら、ひとつひとつ読み返します。

この作業が日々の暮らしにも役立っています。これから何がしたいのか、どんなふうに暮らしたいのかが明確になり、心配性な私も段々と前を向いて進める気がしてきます。書くことで気持ちが整理されて、余計なものが削ぎ落とされるのかもしれません。

読みながら、自分が書いた言葉に励まされることもあります。気持ちは移ろいやすいから、元気な日の自分から、パワーをもらうのだと思います。この経験から、ちょっと落ち込んだ日に、以前の自分から元気をもらおうと、最近あったいいことをノートに書き出してみることに。
庭の秋色紫陽花がきれいに咲いた。愛猫そらがそばに来てゴロンと寝てくれた。初めて買ったパンが美味しかった……。

本当にたわいのないことばかりですが、すらすらと書き進められて、それと同時に気持ちも上がっていきました。
「こんなにいいことあったんだな」と感じながら、私は日常のささやかな出来事が、不安を一番わくわくに変換できるようで、心が緩むのがわかります。

新刊では、そんな50代の日々を楽しく過ごしながら、60代を迎えようと思いつつ、変えたことや変わらないこと、様々なことを書き記しました。よろしかったらどうぞ手に取ってご覧くださいませ。

遊び盛りのやんちゃなそらの画像とともに、皆さまも私も、明日もいい日になりますように。

photograph: Kyoko Omori　text: Ayano Uchida
※ 画像・文章の無断転載はご遠慮ください