『リンネル』の連載「フィンランド西海岸の12か月」。その暮らしは、華やかでも特別なものでもなく、自然とともに、毎日を丁寧に生きるだけ。フィンランドに住む4人のデザイナーたちが発信する地域ブランド・アンナヤリーサが綴る、フィンランドの歳時記をお届けします。今回は雪と氷に覆われたモノトーンの季節をアクティブに過ごすアイデアをご紹介します。
雪と氷に覆われる本格的な冬の到来
フィンランドの1月と2月は、一年中で一番寒い季節。氷点下20度は当たり前で、30度以下になることも珍しくありません。クリスマスの20日後、クリスマスデコレーションが外されると、春が訪れるまでの数か月の間は雪と氷に覆われ、モノトーンの景色のなかで過ごします。
「雪の積もりはじめは、木の枝に積もった雪がアイスクリームみたいにふわっとしていて、それがだんだん凍って固まっていくの。まるで自然の街灯みたい」とエリーナ。日照時間は相変わらず短いのですが、外一面が雪の反射で明るくなるのです。「寒くないの?」と聞くと、「寒く感じるのは服が悪いのよ。ちゃんと防寒していれば大丈夫」とのこと。学校では、氷点下15度になるまでは、休み時間は外で遊ぶそうです。「今日は雪のなかをソリで通園。娘のルートは大はしゃぎだったわ」とタニヤ。
雪と氷が織りなす海上ウォーキングの楽しみ
雪が積もる前はスケートが楽しめていた海が、凍った海に雪が積もると、雪と氷の表面に光が射し幻想的な光景になります。スパイク付きの靴をはき、でこぼこになった海の上を歩くのも、この時季ならではの大自然の楽しみ方のひとつです。「ここがいつも泳いでいる海だなんて信じられないわ。月旅行に来たみたいなの」とヨハンナが力説します。
もちろん雪の季節は楽しいことばかりではなく、雪が積もった日は夜中のうちから除雪車が来て、通勤時間までに道路の雪を除雪します。「大きな音をたてて除雪車が通ると、その音で目が覚めることもあるわ」とエリーナ。そんな日は自宅の前の雪かきも重労働で、ときには何時間もかかります。気温が下がりすぎると水道管が凍りつくこともあるので、真冬の家のメンテナンスは夏場の何倍も大変です。
年に一度の季節のお菓子
「ルーネベリタルト」
1月のもうひとつの楽しみは、季節のお菓子「ルーネベリタルト」。ルーネベリは、19世紀に活躍したフィンランドの国民的詩人で、ルーネベリの誕生日である2月5日は「ルーネベリの日」。この頃になると、ベーカリーやスーパーマーケットに、ラズベリージャムのトッピングがトレードマークの愛らしいルーネベリタルトが登場します。
ルーネベリタルトは、甘いもの好きのルーネベリのために、妻がクリスマスのジンジャーブレッドクッキーの残りを砕いて作ったのがはじまりといわれるお菓子ですが、工程が多くて作るのが大変なので、今ではホームメードで焼く人は少ないようです。タニヤ曰く「結構こってりしたお菓子だし、そんなたくさん食べるものじゃなく、お気に入りのベーカリーのを年にひとつ食べる感じかな。もちろん一番おいしいのはうちのお店よ!」
なつかしい切り紙遊びを、温かなインテリアに
「雪の季節にぴったりの雪のモビール」
日本でもおなじみの折り紙の雪の結晶。パターンペーパーを使ってモビールにすれば、冬の窓辺のインテリアにぴったりです。
数か月もの間、雪とともに毎日を過ごすフィンランド人にとって、雪の結晶は冬を象徴する形です。そして、実際の雪の結晶をよく見ると、少しずつ形が異なっているのがわかり、いろんな想像力が湧いてcきます。パターンペーパーを六角形になるように折って作った雪の結晶。どんな形になるかは、開いたときのお楽しみ。
HOW TO MAKE
3.開く瞬間が一番楽しい。もうちょっと複雑にしたいときは元に戻してまたカット。糸を通してつなぎ合わせると、モビールの出来上がり。
アンナヤリーサとは
アンナヤリーサ(Anna ja Liisa)は、フィンランド西海岸オストロボスニア地域に住む4人のデザイナーたちが発信する地域ブランド。左より、タニヤ、アンドレアス、エリーナ、ヨハンナ。
ヘルシンキの北西約500キロ。起伏がない広大な大地の向こうには、真っ直ぐな地平線が広がっています。普通の暮らしのなかに、必ず喜びや楽しみがあり、小さな感動からデザインが生まれます。
教えてくれたのは……「アンドフィーカ」代表 今泉幸子さん
7年前に初めてこの地を訪れ、自然の美しさと人々の温かさ、そしてデザインのある暮らしに感動。以来、毎年のように現地に通い、デザイナー4人との心の通い合いがアンナヤリーサ誕生のきっかけとなりました。デザイナー4人とともに、アンナヤリーサの12か月の暮らしについてお伝えします。
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photograph:Anna ja Liisa edit & text:Sachiko Imaizumi web edit:Riho Abe
リンネル2022年3月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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