本音で語り合える関係とアンガーマネジメント 【OVER THE SUN 公式互助会本より vol.2】 本音で語り合える関係とアンガーマネジメント 【OVER THE SUN 公式互助会本より vol.2】
17万人以上が聴いているという、大人気ポッドキャスト番組「OVER THE SUN(オーバー・ザ・サン)」。性別、年齢を問わず、幅広いリスナーから支持されているこの番組から生まれたのが、公式のファンブック『OVER THE SUN 公式互助会本』。その一部とおまけトークを2回にわたってご紹介します。2回目は、放送時に大変話題となったパーソナリティのジェーン・スーさんと堀井美香さんのやりとりをお届けします。
ジェーン・スー
1973年、東京都出身。 作詞家 、コラムニスト 、ラジオパーソナリティ。 『ジェーン・スー生活は踊る』(毎週月〜木曜午前11時 TBSラジオ)に出演中。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で講談社エッセイ賞を受賞。著書に『生きるとか死ぬとか父親とか』(新潮社)、『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『ひとまず上出来』(文藝春秋)、『きれいになりたい気がしてきた』(光文社)、『おつかれ、
堀井美香 ほりい・みか
1972年、秋田県出身。アナウンサーとしてTBSに27年間勤めたあと、2022年3月に退社しフリーランスに 。現在は 、TBSテレビ「坂上&指原のつぶれない店」 、「バナナサンド」 などの人気番組や、数々のCMなどでナレーションを担当。自身が開催する朗読会も、チケットが即完売するほど人気となっている。著書に『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン)、『一旦、退社。〜50歳からの独立日記』(大和書房)など。
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アンガーマネジメントは難しい
■Ep.30 2021年4月23日の放送より
総合格闘技が好きなスーさん。番組のオープニングで試合と実況の話を興奮気味に話したところで、美香さんがした「総合格闘技って何?」という質問に、スーさんが「知らないものに対しての敬意がない」と少し怒ったところから……。
【リスナーからのメール】
おふたりに聞きたいことがあります。怒りのコントロールについて何かされていることはありますか?
心ない攻撃を受けると、「は? なんやねん」と、心の真ん中にどす黒い嫌な気持ちがうごめきます。抑えようとすると声が震え目から水が出てくる始末。どうしたものかと考えては情けなくなり疲れたところに、「負けへんで」が降臨してきました。大阪で生まれた女として大阪弁がなんだか誇らしくなり、「負けへんで」をお念仏のように唱えております。
スーさん美香さんはどうやって怒りのコントロールをしているのだろうかと気になりました。教えてほしいです。(ラジオネーム=大阪で生まれた女)
美香 そうねぇ。
スー 怒ってるときどうする? どうやってコントロールしてる?
美香 だから今、私はずっと黙って聞いてたじゃん。黙って、「なんやねん」と思いながらずっと聞いてたじゃん。この人と一緒で。ずっと聞いてて、そのときは怒らずに、あとから整理をしてぶつける。
スー 整理をしてぶつける。
美香 いつもそうだね。なんかこう、バーッて言われたときにはちょっと黙って、次の日とか、時間が経ってから考える。じゃないと考えられないからね、自分で。まとめる能力がないんだよね。
スー そんなことないと思うけど。でもあれだよね。感情が理屈を上回っちゃうときってあるじゃない。そういうとき、まとまりがつかないよね。
美香 でも私はガーッとはいかないかもね。
スー 確かに見たことないね。
美香 しばらく置くね。置いて、冷静になってから、ちょっと組み立てて、「ひとこと言わせていただきますが……」みたいなときはあるけど。
スー さっきの話も「なるほどそうだよね、興味がない人にとっては、わかんないよね」って共感をまずすればよかった?
美香 そうそうそう。今のこの会話の組み立てを読み解いていくと、まずあなたのほうも「あんた知らないから入ってこないでね」っていうのは確かにあった。
スー うん。
美香 「私一方的に今話してるから。知らないよね?」っていうガードはあった。そこに私がちょっと脇道から入っちゃったもんだから「入ってこないで!」っていう。
スー まず最初に、「堀井さんにはまったく興味のない話かもしれないけれども、ちょっと我慢して聞いてもらってもいいですか」っていう、ソフトなベルベットの絨毯を敷くべきだったよね。この庭にお迎えするにあたってさ。
美香 うん。でもこれ、いいことだよ。どこで私たちがギュッとなったかっていう戦い方を振り返るのは。
スー 戦い方っていうか、道の整備の仕方ですよ。私は昼間のラジオでこの話が十二分にできなかったストレスがあるわけじゃないですか。この番組ならできる! リスナーの人たちもわかんない話でもおもしろがって聴いてくれる!って信頼をある種過剰に持ってやってきて。堀井美香にアツアツのあんかけをぶっかけるようなことをしたわけじゃないですか。 アツアツのあんかけをバシャッてやって。そうしたら、「アツいアツい! 何これ」って。
美香 「具材何!?」って。
スー 「このあんかけの成分を自分で舐めて調べろ」って。
美香 「具材ばっかり何百回、聞かれてきたと思ってんだよ!」
スー 「秘伝のタレだよ」みたいなさ。……でも良かったこととしては、 そこで堀井さんが不服な顔をし続けたことで、ここまでたどり着けたわけじゃん。
美香 そこで、「ごめんごめん!」ってへらへらしたらあれだったけど。 距離がある人ならそれで終わっちゃうけど、今は考えたんだよね。
スー 突然、武闘派堀井が出てきて。「何が悪いんだこの野郎!」と。 逆に言うと、アンガーマネジメントって信頼してない人に対してはできるんだよ。
美香 どういうこと?
スー つまり、こいつのことをよく知らんとか、この人のことは信用できないって相手に対しては、アンガーマネジメントってできるじゃん。だけど、そこに信頼とか期待とかがあると逆にできなくなるんじゃないの。
\スーさん&美香さんに聞きました/
美香 あんかけの話は、よく言われますね。
スー あれは結果論で、お互いの関係値があったから言えたというところは美香さんもあるんじゃないですかね。仕事で知り合って、目の前にあることをちゃんと遂行していくためにはどうしたらいいか、という向き合い方をしてきたから、多分あそこで本音で語っても大丈夫だという判断がついたんだと思います。
photograph:Keiko Ichihara edit & text:Mayumi Akagi
※写真・イラスト・文章の無断転載はご遠慮ください
※本記事は『OVER THE SUN 公式互助会本』(左右社)からの抜粋です。
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