日本語の響きを大切にしながら、柔らかさと芯の強さを兼ね備えたサウンドで人気を集める、シンガーソングライターの吉澤嘉代子さん。待望の新曲「氷菓子」は、吉岡里帆さん、モトーラ世理奈さん、詩羽さん(水曜日のカンパネラ)、松本まりかさんが出演する映画『アイスクリームフィーバー』(TOHO シネマズ日比谷、 渋谷シネクイント ほかにて全国ロードショー)の主題歌として書き下ろされたもの。映画の世界に寄り添いながらも、日々の暮らしの中で起こる出来事をドラマティックに変えてくれるような、輝きにあふれた仕上がりになっています。
監督の作品づくりへの姿勢を参考にして完成させた楽曲
ーーアルバム『赤星青星』のリリースから2年4か月ぶりとなる新曲になりましたね。
吉澤嘉代子さん(以下吉澤さん):ずっとこの楽曲に取り組んでいたので、時間がかかってしまいましたね。
ーーでは、随分前から映画の主題歌のお話があったと?
吉澤さん:そうですね。楽曲ができなくて映画の完成が遅れたということはないですが(笑)、締め切りまでじっくり制作していたという感じですね。
ーー実際に映画の撮影現場にも足を運んで、作品の雰囲気を掴んだりとか?
吉澤さん:そうできたらいいなと思って、実際に映画に出演することになりまして。出演は一瞬ですけど。あっという間に終わったので実際に雰囲気を掴むまではいきませんでしたが、監督の千原徹也さんが最初の段階からどういう作品にしようかと、葛藤しながら考えている姿を拝見していたので、その様子などを参考にしながら完成させました。
ーー完成した楽曲「氷菓子」は、映画にちなんだものになっていると思うのですが、なぜこのタイトルに?
吉澤さん:最初は映画のタイトルで曲を作ってほしいとオーダーいただいたのですが、アイスクリームって結構タイトルになってるなと思って。自分らしくアイスクリームをどう言い換えたらいいかを考えていくなかで、思い浮かんだ言葉でした。
何かを編み続けることが大切なんだと気づいた
ーー楽曲は、映画に登場するなかなか思い通りにいかないけれども、前進しようとする4人の女性のアイスクリームのような甘くときに冷たい人生を丁寧に描いている気がしました。
吉澤さん:今までの楽曲では、一人の主人公と対峙しながら制作している部分が多かったのですが、今回は一人の主人公ではなく、群像劇になっているというか。監督の言う「人生はやさしく繋がっている」ということは何だろう?ということを考えながら制作しました。届けたい人に思いが届かなかったとしても、何かを編み続けることが大切なんだということに気づいて。自分の場合は音楽なのですが、それはどんなことでもいいと思う。たとえ報われなかったとしても、何かを編み続けること、発信し続けることで誰かの人生と重なるかもしれない、それがやさしく繋がるということなのかなと思い至りました。
ーーまた、アレンジもストリングスを交えたりとか、これまでの楽曲にはない壮大さがありますね。
吉澤さん:確かに。壮大さがありますね。今回は疾走感をテーマにアレンジャーの野村陽一郎さんに手がけていただきました。<左様ならさえも〜あまいひかりを編む>というフレーズでコードを変えたいというアイデアがレコーディング中に浮かんできたのですが、そんなわがままにも柔軟に対応してくださりました。
ーー1秒も妥協のないサウンドなのですね。
吉澤さん:映画を含め、この作品に携わった方々はみなさんそういうタイプみたいで。仕事を終えて、お布団に入った時「こうすればよかった」と後悔したくないという。
ーー結果ヴォーカルも、これまでにはない情緒を感じられるドラマティックなものになっていますね。
吉澤さん:ヴォーカルのディレクションも野村さんにお願いしました。これまでは別の方にお願いをしていたので、そこでもちょっと違いを表現できたのかなって思います。
ーー完成した楽曲を映画を通してご覧になっていかがでしたか?
吉澤さん:最初はワンコーラスが使用されるというお話だったのですが、実際はほぼフルコーラスで流していただきまして。そのシーンはとても印象的になりました。アートディレクターの千原さんだからこその丁寧にデザインされた映画に仕上がっているなと思いましたね。
ーーこの楽曲を通じて、感じてほしい景色はありますか?
吉澤さん:この楽曲は映画があってこそ生まれたものなので、その作品のひとつの彩りになればいいなという気持ちが強いですね。
ーーまた、今回の映画のプロジェクトに関わったことで、新しいアイデアも生まれたのでは?
吉澤さん:次は<青春>をテーマにしたものを作ってもいいのかなとか。その一部に今回の「氷菓子」も入ってくるのではと思います。楽しみに待っていてください。
ずっと好きで集め続けている「ほうき」
ーーさて、楽曲制作中はアイスクリームをたくさん召し上がっていたそうですが、最近ハマっていることは何ですか?
吉澤さん:ずっと好きで集めているのは<ほうき>です。小さい頃は魔女になりたくて、今も憧れがあります。でも、実際のお掃除グッズになってしまうと、収納に困るので、雑貨屋さんにほうきの形のペンやブローチなどがあるのを見つけるとすぐに購入しちゃいます。
ーーじゃあツアー・グッズとかで制作してもいいのでは?
吉澤さん:実は制作したこともあります。
ーーでは実際の暮らしでもほうき派?
吉澤さん:いえ。あくまで展示用でして。普段はロボット掃除機に頼っています。
ーーどういうほうきがお好きなのですか?
吉澤さん:いくつかあるのですが、ひとつは小さい頃に購入したおしゃれなデザインのもので、もうひとつは、キャンペーンで使用した、奇跡的なバランスで自立するほうきです。今度「ほうき」特集があった際には、ぜひお声がけください!
映画『アイスクリームフィーバー』主題歌「氷菓子」
ビクター
now on sale
2023年7月14日公開映画「アイスクリームフィーバー」の主題歌としての書き下ろし楽曲。デジタル配信のほか、2021年に開催されたライヴ「出張・すなっく嘉代子(時短営業)」の模様を収録したDVD付きのパッケージ版を、VICTOR ONLINE STORE限定で発売。
Profile
よしざわ・かよこ/1990年生まれ、埼玉県川口鋳物工場街育ち。2023年7月23日に、ニューシングル「氷菓子」のリリースを記念したYouTube生配信イベント「つめたいあまい生配信」を開催する。
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photograph:Miho Kakuta styling:Daisuke Tanaka hair&make-up:Naoyuki Ohgimoto text:Takahisa Matsunaga web edit: Liniere.jp
リンネル2023年9月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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