注目の人・瀧内公美さんの仕事論 「やれること」が、いつしか「やりたいこと」に。 しんどさ、わからなさを乗り越えて、人はプロになっていく/舞台『夫婦パラダイス〜街の灯はそこに〜』インタビュー 注目の人・瀧内公美さんの仕事論 「やれること」が、いつしか「やりたいこと」に。 しんどさ、わからなさを乗り越えて、人はプロになっていく/舞台『夫婦パラダイス〜街の灯はそこに〜』インタビュー
わからない世界を、わからないままに。
振り切って、私も楽しくなろう
━━出奔し、場末のスナックに転がり込んだ柳吉と蝶子。二人を迎えるスナックのママも、常連客も、店に出入りする出前持ちの少女も、どこか一筋縄ではいかない人物ばかりですが、そこにさらなる謎の人物が現れ、ついには時間空間までもが歪み始めて、というファンタジックなストーリー。「まともに受けていたら前に進めない」と感じた瀧内さんは、とにかく振り切る覚悟を決めたといいます。
「何の脈絡もなく展開する物語を受け入れるのは大変ですが、ひとりだけ妙にリアルでいても『あの人、戸惑ってるね』と悪目立ちしそうだし、私自身も楽しくない。だったら、このノリに巻き込まれて乗っていこう、楽しくなるほうを選択しようと……。表現する技術の高い方々が集まっていますから、いかにお客さまに楽しくお見せするかということにかけては、稽古中の今でさえ、もうすでに笑ってしまう楽しい場面ばかりです」
━━思い出し笑いで、ときには目に涙まで滲ませる瀧内さん。思えば、物語の突拍子のなさは、私たちの人生にも通じるものなのでしょう。劇中、蝶子が祖母からの教えとして語る《この世というのはワカランところ、ひとも自分もワカランもの・・・》という言葉を「大事に届けたいと思っている」と語ります。
「蝶子がダメ男の柳吉さんを選んだのも、本当に『ワカランけれど』に尽きると思うんです。理屈だけではないというか。現代は、とにかく‟わかる”ことが正義じゃないですか。わからなければ、もうそこで終わり。でも、わからないことにはわからないがゆえの美しさみたいなものがあって、それが演劇にはとくにあると思うんです。2時間、劇場の中で夢を見て帰っていく……正直、やったことのないタイプの作品ですが、そういうものに出会えるのはすごく贅沢だし、こちらの遊び心も試されているように感じます」
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