CULTURE
:Charaさん「忘れられないほど美しく、悲しい。それが現在の自分を象徴する言葉だと思った」/ベスト・アルバム『The Love Songs of Chara "Lush Life”』インタビュー
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洗練されたサウンドと独特のボーカルで、これまで多数の〈愛の歌〉を届けているCharaさん。デビュー35周年イヤーがスタートし、自身でセレクトしたラブソングを収録したベスト盤をリリース。時代を彩る名曲の数々からは、甘くせつない残像が見える内容になっています。この作品・ラブソングにこめた思い、また最近の暮らしへのこだわりなどをうかがいました。
新曲「Lush Life」に導かれ完成したベスト盤

━━デビューから34周年を迎え35周年イヤーがスタートしましたが、心境の変化みたいなものはありますか?
Charaさん(以下敬称略) そういうのって言われないと意識しないから、意識するのは悪くないかなと思っていて。デビューしてから、さまざまなレーベルに移籍しながら活動をしてきて、今回古巣であるソニーさんへ復籍し、今回のベスト盤のお話をいただきました。私は過去にベスト・アルバムを何枚も発表しているので、出す意味のある特別な内容を意識しました。先行配信した新曲「Lush Life」に導かれるような感じで、私自身の選曲による作品を発表することにしたんです。
━━新曲ありきのベスト盤だったのですね。
Chara 私の義弟がアメリカの人でデザインの仕事をしているんだけど、ふだんから音楽の話をすることもあって、ある日、新曲のタイトルについて話をしていたら、「Lush Life」(ラッシュ・ライフ)っていう言葉がでてきたんです。その言葉の解釈っていろいろあるんだけど、彼の友人である学者さんの《忘れられないほど美しく、悲しい》という詩的な解釈が、すごく素敵だなって心に残って。さまざまな人生を歩んできた大人だからこそ、解釈できる言葉だなって思ったし、私も34年間の活動のなかで一貫して自分のアーティスト像を守ってきたことが、美しさとも言えるのかな?って感じたの。
━━素敵な解釈の言葉ですよね。この楽曲をメインとしたベスト盤は、未発表曲「僕は残像」を含めラブ・ソングばかりをセレクトした30曲を収録されています。
Chara 現在の自分の声にあわないものは収録していないかも。最近のライブで歌っているような、そこで育まれているような楽曲は入れたいなと思って。「僕は残像」は、以前に完成していた曲なんだけど、「Lush Life」と同じコンセプトで作ったような雰囲気の内容になっていて、その繋がりが面白いなと思いましたね。
━━確かに、同じような世界を感じる楽曲ですよね。この楽曲は、BREIMENの高木祥太さんがサウンド・プロデュースされていますね。
Chara この楽曲は、ベースフレーズから作った曲だったので、ベーシストにサウンド・プロデュースをお願いしたいなと思って。この楽曲の感じや私のことをわかってくれる人として思い浮かんだのが、祥太でした。実は、彼がデビュー前の高校生のころに、SNSで(5年以内にCharaさんのバックで演奏する〉という投稿をしていて、それを偶然見た私が〈お待ちしてます〉って返信したの。そうしたら、彼が23歳のギリギリ5年が経過したとき、私が新しいベーシストを探していて、人づてで彼にたどり着いたの。
━━それは運命みたいなものですよね。
Chara それで何度かライブで共演していくうちに、彼は意外と「タイムマシーン」みたいなスローなバラードが好きで、ステージで泣きながら演奏していることもあって、かわいいじゃんみたいな(笑)。こんな話をしていいのかどうかちょっとわかんないけど、とてもピュアな人だなって。今回のツアーでも久しぶりに祥太が参加しているので、それがとても楽しいし、めちゃくちゃ演奏がうまくなっていて、驚きました。
━━言われてみると「僕は残像」って、「タイムマシーン」っぽいはかなさがありますよね。
Chara 私ってCコードが好きみたい(笑)。簡単だからというか、昔から最初はCで始まる楽曲が多いかなって。
「暮らしに潜む普遍的な言葉に魅力を感じる」

━━でも、最近の楽曲は、強い個性を表現するというよりは、楽曲の持っているムードをていねいに伝えることに焦点をあてているような気がします。
Chara 以前の歌い方って、すごいテクニックを使っていて、ウィスパーとかミドルボイス、地声とか。
それらを何パーセントずつ使うとか、楽器のようなボーカルを追求していくうちに自然にそれが表現できるようになったんだけど、ちょっと変わった歌い方だよね(笑)。結果、独特になっちゃったかも。でも、それがよかったりするんだけどね。
━━今回のベスト盤はラブソングばかりを収録。ラブソングを作るにあたってのこだわりはありますか?
Chara 私の場合、リアルに誰かに何かを伝えたいとか、うまく伝わらないときに楽器が力を貸してくれる。本当は、上手に手紙を書けたり、面と向かって思いを伝えることが上手だったら、もっと恋愛もうまくいってたかも?曲はできなかったかもしれないけどね(笑)。たまたま私は自分で曲を作ったり、気持ちをメロディーにしたためたり、言葉を紡いでいくことで誰かにそれを伝えたり、景色が生まれたりするのかなって思う。ちなみに、ハッピーな結末を描いたものって、そんなに多くなくて。確かに、そういう楽曲もいくつか作っているけれど、すごくパワーが必要になってくる。想像が一番のご馳走っていうよね。恋ってもの凄いパワーを使うのよね。
━━1990年代に制作されたものと、現在で描く<ラブ>に変化があるのでは?
Chara 最近は、改めて日本語の面白さや美しさを感じることが多くなっているかなって。若い頃は、差別化っていうか、自分はみんなと違うのよみたいな言葉や表現をあえてしていたこともあったけれど、最近は日々の暮らしのなかに落ちている普通の言葉にも深みがあることに気づいたし、またそれをストレートに使えるようになったことは自分にとってうれしいですね。「僕は残像」で〈離脱〉って言葉を使ったんだけど、それがすごい気に入っていて。最近、私のよく知ってる女性が失恋したときに、それを普通に使っていて、すごいパワーのある言葉だなって。私よりも若い世代の人が暮らしに取り入れていることに、グッときたというか。そういうふだんの会話に出てくる言葉を、最近はうまく取り入れることができるようになった気がする。以前だったら、そういう表現を取り入れたら、自分の個性がなくなっちゃうとか思っていたけれど、そういうことはまったくないし。逆に、普遍的なことを柔軟に取り入れることによって個性がどんどん色濃く表現できているのかなって思う。
「納得のいく道具をそろえることで暮らしが充実」

━━確かに、徐々にシンプルになりながらも個性が光る楽曲が増えている印象がしました。ゆえに、暮らしの風景が楽曲のインスピレーションになることも多いのでは?
Chara 特に気になるフレーズや言葉をメモったりはしなくて、忘れてしまうようなものは、たいしたものじゃないっていう感覚で過ごしていて。ただ、日常の会話のなかで強く印象に残った言葉とか、使いたい言葉とかを音楽として表現できたらいいという気持ちで暮らしている感じなのかもしれないですね。最近はひとり暮らしなので、自宅での話し相手といっても愛犬と植物くらいなんだけれど、植物にはお水をあげるとき『めっちゃきれいだね』とか言ってたりします(苦笑)。
━━でも、植物たちも喜んでいるのではないのでしょうか。
Chara それは本当にあると思う。会話をしていると、根っこ出てきたりとかね。成長しているようすがわかる。
━━そうなんですね。では最近は植物と暮らす日々をお過ごしなのですね。
Chara 植物系アーティストだねって友達からメッセージをもらいました。ほかにそういう人はいるの?とたずねたら返信なかったけれど(笑)。でも、幼いころから押し花とか好きだったし、母親も好きだったこともあってか、植物に囲まれた暮らしをしているのかなって思う。
━━素敵な暮らしですね。
Chara 私、推し活が植物になっちゃっていて(笑)。でも、植物の世話をするっていうのはすごくいいことだなと思う。朝起きて光をあび、植物に水あげたり、土を取りかえたり、剪定とか、そういう行動が暮らしにいい循環を生んでいる気がします。
━━それが、音楽にもフィード・バックされているかもしれませんね。
Chara もっと幹を太くしたいとか、選定のしかたとか、ちょっとずつ覚えていくのって、なんか繋がっていそうな気がする。
━━また、最近の暮らしで取り入れているもの、ことはありますか?
Chara 最近ねぇ……、道具選びは大切だなって思う。特に料理道具だと、最近は大根の鬼おろし器がよかったかな。あれのおかげで、また料理が楽しくなったし。音楽もそうだけど、自分の納得のいく、なじむ道具がそろっていると、シャキッとして取り組みたい気分になる。だから、生活のなかの道具選びっていうのはすごい大事。お手入れもね、ちゃんとしたくなるし。鉄ってすぐに錆びるから、なるべく多用してちゃんと乾かすみたいな。若いころはあんまりできなくて、失敗もあったから。そういう経験を通じて、道具をメンテナンスして大切にするようになっているかな。だから、包丁にも名前を刻んでもらったりだとか。
━━そういう特別感をだすと、大切にあつかいたくなりますよね。音楽に関しても、今後よりていねいな活動をされる気がします。
Chara 人生は長いようで、あっという間で、音楽活動も気づいたらもう34年が経って。だから、やりたいことがあったらガンガン挑戦したい。できる範囲で。とりあえず来年の35周年に向けてはやりたいことがたくさんあって。私の息子(HIMI)もミュージシャンで、一緒に作品を作って共演もしたいし、弾き語りやバラードを中心にしたライブも開催したいし。あとは、ラブもちゃんとしないとね(笑)。
━━でも現在は、植物という恋人がいますから。
Chara それはやだ。来年はひとりの人にモテたいです(笑)!
ラブソング・ベストアルバム『The Love Songs of Chara “Lush Life”』

ソニー・ミュージックレーベルズ/レガシープラス
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「やさしい気持ち」「タイムマシーン」、YEN TOWN BAND名義の「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」など名曲の数々や、新曲「Lush Life」と同時配信された未発表曲「僕は残像」も含む全30曲を収録した2枚組ラブソング・ベスト。Charaさんと過ごした34年間に思いを寄せると同時に、これからどんな風景をみせてくれるのかも楽しみになってくる内容です。
PROFILE
チャラ/1991年9月にデビュー。その後、多数のヒット曲を生みだしているのはもちろん、ファッションやライフスタイルも注目される存在に。現在「Chara Live 2025 〜Lush Life〜」を敢行中。12月5日は東京・EX THEATER ROPPONGIにて公演。今後、35周年に向けての活動にも注目。最新情報はオフィシャル・サイトをチェック。
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text:Takahisa Matsunaga
※11月20日発売のリンネル1月号では、Webとは異なる写真とインタビュー記事を公開
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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