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:荒井良二さん「いつも暮らしのなかにいた『猫』の存在が大きかった」-書籍インタビュー
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生まれたときからそばにいた猫という存在を、絵と言葉で描いた荒井良二さんの絵本『ねこのゆめ』。今回は発売を記念し、インタビューをしました。絵から感じる荒井さんならではの世界観、ぜひ手に取って感じてみてくださいね。
荒井良二さん「いつも暮らしのなかにいた『猫』の存在が大きかった」-書籍インタビュー
描いたものを風みたいに感じてもらいたい。
人それぞれにきっとある、暮らしのなかでの気になること。荒井良二さんにとって、それは「猫」でした。生まれたときからそこにいて、少なからず身近な存在。常にじっと観察しているわけじゃないけれど、ふと見かけると、あれこれ心をめぐらせる。特に猫が「ふみふみ」する姿は、子どもの頃から不思議に思うことたびたび、だとか。
「好きだから、余計に知りたいんですよ。何を考えてるんだろうな? 安心してるのかな? 何か深いことを考えている、神様みたいに見えることもあれば、何も考えてないかもと肩透かしされたり。両極端なことをやるんですよね。人間っぽいよね」
荒井さんの絵本の着想はこんなふうに、たいていは何気ない「気になる」から始まります。「そこから『ねこはいつもゆめみてる』という言葉が、自分のなかから引き出されたんですよね」
そして創作へ。心がけたのは「どれだけ猫を写実的に描くか、描かないか」のせめぎ合い。「本当はうまく描けるんですよ(笑)」なんておどけながら、「お勉強の本じゃないので、どこかファンタジーの要素を入れたくて」きちんと描きすぎないことを大切に。一方で「へんに擬人化させないようにすること」も、意識したひとつ。「人格を与えすぎると、猫が遠のいてしまう。またキャラクター性を強めてしまっても『うちの猫と違う』と感情移入できなくなる」
そうしたこだわりの奥底にあるのは、荒井さんが「猫好きの人にも楽しんでもらいたい」という思い。ただ一方、制作時の苦労話は「本当は出しちゃいけない」と言う荒井さん。「『力作ですよね』と言われるのが一番ショックで。かわいい、きれいって言われるのがうれしい。風みたいに感じてもらいたい」
その心を問うと、「……うまく言えないけれど、苦労するって人間が生きていくうえで、すでにはめ込まれたパズルの1ピースみたいに思ってるところがあって。なので別の、外の世界に触れるときは、そのピースは必要ないと思うんです。ましてや絵本になると作家は、描かれている世界にすっと入り込ませる案内役でしかないので」。
だからこそ、その世界はきっと子どもだけじゃなく、私たちにも響く。「いつも子ども向けに作ってないからですよね。かといって、大人向けでもない。人に開かれたものとして描いているので」
新著 『ねこのゆめ』

ねこはいつもゆめみてる。会いたい誰かが待つ世界を――。登場するのは猫という親しみ深い存在ながら繰り広げられる物語は、時空をゆうゆうと超えたファンタジア。国内外で活躍する絵本作家のトップランナーでありながら、絵から感じる印象は、強烈な果実をかじったようなフレッシュなパッション。そのギャップのある世界を、ぜひ感じて。
お話を伺ったのは……荒井良二さん
PROFILE
あらい・りょうじ/1956年山形県生まれ。1999年『なぞなぞのたび』でボローニャ国際児童文学図書展特別賞を受賞したほか、国内外で数々の絵本賞を受賞。現在、横須賀美術館にて展覧会「new born 荒井良二いつもしらないところへたびするきぶんだった」が開催中。 詳しくは下記リンクからチェックしてみて!
https://arairyoji–nb.exhibit.jp/
photograph:Kohei Shikama text:BOOKLUCK web edit:Liniere.jp
リンネル2023年9月号より
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