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向井理さん「舞台の仕事は毎回吐きそうなほど緊張する。でもまたやりたくなる」 舞台インタビュー 向井理さん「舞台の仕事は毎回吐きそうなほど緊張する。でもまたやりたくなる」 舞台インタビュー

向井理
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話題作への出演が続く俳優・向井理さん。今、取り組んでいるのは、11月から公演が始まる主演舞台『リムジン』。本作への意気込みや、観客の前でライブで演じる舞台ならではの醍醐味を伺いました。

目次
向井理さん「舞台の仕事は毎回吐きそうなほど緊張する。でもまたやりたくなる」 舞台インタビュー
  1. 向井理さんインタビュー
  2. M&Oplaysプロデュース『リムジン』公演情報
  3. Profile

緻密な会話劇を生々しく演じたい

舞台『リムジン』は向井理さん演じる主人公・康人が、自己保身のためについた一つの嘘が、次の嘘を呼び、逃げ場のないところまで追いつめられていく恐怖を、ブラックな笑いを交えて描く心理サスペンス。作・演出を倉持裕さんが手掛ける注目作です。脚本を読んだときの印象を、こう話します。

「倉持さんの作品は緻密で軽妙な会話劇が見どころの一つで、本作もたわいもない会話を重ねながら物語が進んでいきます。演じる側としては、大きな事件が起きるわけでもなく、登場人物が内面を吐露するわけでもないなかで、物語のうねりをどう伝えるかが大事だと感じました。芝居では“普通の人が一番難しい”と言われますが、康人は極悪人でも善人でもないまさに“普通の人”。記憶に残らないような人物ですが、会話の中にキャラクターがにじみ出てきたら理想的。見る人によって感じ方が違うと思うので、なにかしら心に引っかかったらいいなと思います」

脚本の魅力を舞台で表現するために、自然に稽古にも熱が入るようです。ですが、その一方で“稽古量”が出てしまわないように気をつけていると明かします。

「会話劇はかなり稽古しないとスムーズにいかないし、逆に稽古しすぎてテンポがよくなりすぎると“段取り”になってしまいがち。“自分の番が来たからセリフを言います”というふうに見えてしまったら、何も伝わらなくなってしまいます。なるべく新鮮に演じたいし、お客様にも生々しいものを見ていただきたいので、ひと通り自然に演じられるようになったら、後は忘れていく作業をしていきます」

人と接するときは嘘のない自分でありたい

シャツ ¥33000/ESLOW(ENKEL 03-6812-9897)、パンツ ¥48400/08sircus(08book 03-5329-0801)

本作のテーマは“嘘”。『リムジン』は康人夫婦が手に入れたい成功の象徴で、それを得るために嘘をついてしまうことが物語の発端に。二人の選択をどう感じるのか、聞いてみました。

「誰でも欲望はあると思うんです。役職につきたいとか、ボーナスをたくさんもらいたいとか、子どもだったら、速く走れるようになりたいとか。それを守るために、つい嘘をついてしまった経験は少なからずあるのではないかと。子どもの単純な嘘なら『しょうがないな』と許されますが、大人は社会的な地位や経済的なことが絡むから質の悪い嘘になりやすいし、その後もやっかいなことになるんでしょうね。正直に話すほうが今は傷つくにしても一番いい解決法だとわかっていながら、人に合わせてしまったり、失うのが怖くて嘘を重ねていくところが、この作品のおもしろさであり、シリアスさだと思います」

向井さん自身の嘘との向き合い方を聞いてみると……。

「僕も子どもの頃に嘘をついて失敗した経験がたくさんあります。嘘がバレるとものすごく大変なことになるし、罪悪感に苛まれると身に染みていますから、人と接するときはなるべく嘘がないようにしています。ただ、ついていい嘘と絶対についてはいけない嘘があると思います。本当のことを説明すると回りくどくなるときにわかりやすくするための嘘や、『いい子にしていないと鬼が来るよ』みたいなことは言いますね(笑)」

舞台に立つと芝居に敏感になる

初舞台を踏んだのは2009年のこと。そこから定期的に出演作を重ね、俳優として着実に幅を広げています。向井さんにとって、舞台作品での経験が大きな糧になっているようです。

「舞台作品は1~2年に1回くらいのペースで出演して刺激をもらっています。本番が近づいてくると緊張で吐きそうになるし、なんで受けたんだろうと毎回思うんですけど、終わってみるとまたやりたいという気持ちに。舞台はライブなので、セリフが飛んだり、突発的なことが起きたり、予測不能なことがたくさんあります。どこから何が飛んできても芝居を続けてちゃんと回収しなければならないので、すごく敏感になります。その感覚を味わいたくて、舞台作品に出演しているのかもしれません」

稽古中に煮詰まってしまったり、うまくいかないことがあっても、あえて解消しないのだとか。

「2019年に主演した舞台『美しく青く』のときにどう演じていいか迷ってしまって、作・演出の赤堀雅秋さんに相談したんです。そしたら、『悩んでいる人だから、それでいいんじゃない』って答えが返ってきてハッとしたんです。背負うものがあるキャラクターだから、それを下ろして身軽になってはいけないんですよね。以来、煮詰まった感覚や違和感をあえて解消しないようにしています。気まずい場面ならば、やりにくさがないと生々しい芝居にはなりませんから」


向井理さん主演舞台
M&Oplaysプロデュース『リムジン』公演情報

田舎町で小さな工場を営む康人(向井理)は、町の実力者・衣川(田口トモロヲ)から後継者に選ばれる。ところが、その喜びもつかの間、康人は誤って衣川に怪我を負わせたうえにごまかしてしまう。そうして濡れ衣を着せられたのは康人の友人・坂(小松和重)。「全部正直に話そう」と、妻・彩花(水川あさみ)に説得されて、ようやく覚悟を決めた康人だが、いざ衣川を前にすると、夫婦ともども再び迷い出し……。小さなコミュニティの中で起こるささいな事件。そのさざ波のような波紋が静かに拡がっていき、康人は、これまでの選択すべてに疑念を抱き始める。

作・演出:倉持裕/出演:向井理、水川あさみ、小松和重、青木さやか、宍戸美和公、田村健太郎、田口トモロヲ/主催・製作:株式会社M&Oplays
東京公演/2023年11月3日(金)~26日(日) 本多劇場
富山公演/2023年11月29日(水) 富山県民会館ホール
名古屋公演/2023年12月2日(土)、3日(日) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
熊本公演/2023年12月7日(木) 市民会館シアーズホーム夢ホール
福岡公演/12月9日(土)、10日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
広島公演/12月14日(木) JMS アステールプラザ 大ホール
大阪公演/12月16日(土)、17日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

Profile

向井 理
むかい・おさむ/1982年2月7日生まれ、神奈川県出身。2006年俳優デビュー。2010年連続ドラマ小説『ゲゲゲの女房』でヒロインの夫役を演じて注目を集める。近年の出演作に、主演舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』(22~23)、映画『イチケイのカラス』(23)、ドラマ『警部補ダイマジン』(23/テレビ朝日)など。主演ドラマ『パリピ孔明』(23/フジテレビ)が放送中。

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photograph:Emiko Tennichi styling:Yukari Tonoyama hair & make-up: Yasushi Miyata(THYMON) text:Harumi Yasuda
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