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【防災】地震に強い家づくりのメソッド 震度6でも物が散乱しない、倒れない! 【防災】地震に強い家づくりのメソッド 震度6でも物が散乱しない、倒れない!

連載 #防災

地震、水害などが続き、かつてないほど災害が身近になっている今。防災対策ができていると自信を持っていえる人は多くはないはず。家の中の被害が最小限なら、避難の準備も楽になり、自宅避難もできる。つまり心のダメージが少なくなるのです。数々の被災地に入ったレスキューナース・辻 直美さんに、防災・減災につながる、地震に強い家づくりについて教えてもらいました。

目次
【防災】地震に強い家づくりのメソッド 震度6でも物が散乱しない、倒れない!
  1. 代用テクニックで、すっきり暮らしながら備える
  2. 地震に強い家づくりのテクニック<キッチン>
  3. 地震に強い家づくりのテクニック<リビング>
  4. 地震に強い家づくりのテクニック<玄関>
  5. 地震に強い家づくりのテクニック<洗面所・トイレ>
  6. 地震に強い家づくりのテクニック<寝室>
  7. 教えてくれた 辻 直美さん profile

代用テクニックで
すっきり暮らしながら備える

2018年、大阪府北部地震の震度6弱の揺れの直後。辻さんの隣のお宅は、棚が倒れてぐちゃぐちゃの状態に。しかし、マンションの隣室、同じ間取りの辻さん宅は、調味料の瓶がいくつか倒れただけだったそう。

「対策をしているのとしていないのでは、家の中の状態がまったく違います。地震直後、けがに気をつけながら家の中を片付けるのは大変なこと。そうならないための対策が第一歩です」

まず、地震に強い家は、ものの置き場所の見直しから。避難経路となる廊下や玄関にはものを置かない、落ちてきたら危険なものは上のほうには置かないというところから始めてみて。また、今自分が座っているまわりを見まわして、落ちてきたり、倒れそうなものはないかを考えて。どかしたり、固定するのがいちばんですが、事前にわかっていれば、危険な場所から素早く離れることができます。さらに、ものの置き場所を定めると、不要なものがわかるので処分を。それだけで室内では大幅に減災できます。

●震度6弱の震災直後の様子

辻家のリビング
ほとんどものが動かなかった辻家のリビング。異常がないかチェックするだけなので、30秒で復興できます。
お隣の様子
同じ地震での、お隣さんの状況。奥さんが入院したり、親戚も被災するなどして片付けができなかったこともあり、片付けるまでに1か月半ほどかかったそう。心理面での負担も大。

地震に強い家づくりのテクニック
<キッチン>

キッチンには包丁やはさみ、お皿など、地震の際に凶器となるものがあります。家を防災仕様にするなら、まずキッチンで、ものが落ちたり飛んでこないようにしましょう。包丁などを出しっぱなしにしないこと、フライパンや包丁を壁に飾るのも、防災面ではNGです。重いものや割れやすいものは収納の下の段に置くと、棚やラックの重心も安定して倒れにくくなります。高級なお酒などを上のほうにしまっておくと、落ちて割れたら引火の危険が! 飲まないのなら処分してしまいましょう。つり戸棚の上には軽いものをしまい、100円ショップにある開き戸ロックをつければ、落下が防げます。

●震度6弱の震災直後の様子

辻家のキッチン
お隣のキッチン

キッチンでは日用品の多くが凶器になります。下は収納していたものの多くが、落下してしまったキッチン。ここから避難するのが大変です。足をけがしてしまったら、逃げることもできません。

●キッチンラック収納例

・上の段にはキッチンペーパーなど軽いものを収納。
・家電は使いやすい位置でOK。ただし、滑り止めシートを敷く。
・下の段には食器類を収納し落下して割れるのを防ぐ。
・酒などガラス瓶は下に収納。
・水は最下段に収納。ラックの下段に置けば重心を安定させラックの倒壊を防ぐことも。
・キャスターには動かないように、ストッパーをかます。

●キッチン その他のアイデア

開き戸安全ロック
軽いものしか入っていなくても、片付けの手間がなくなるように、つり戸棚にはロックをするのが◎。¥110/ダイソー
家具や家電の転倒防止
家具や家電は天井までのスペースを埋めると転倒防止に。突っ張り棒は揺れの方向によっては飛んでしまうので、接地面が大きく中身を詰めた段ボールを置きます。
100円ショップの滑り止めシート
食器を収納するスペースに敷いたり、小物入れの底面に張りつけます。収納からものが飛び出すのを防止。¥110/ダイソー

地震に強い家づくりのテクニック
<リビング>

小物が多いリビングは、ボールペンや定規など気づかずに踏んで、大けがになる危険が潜んでいます。「ものを使ったら必ず元の位置に戻す」を徹底し、けがのリスクを減らしましょう。収納するのは、滑り止めシートを張った収納ケースの中。「さらに、棚の扉には耐震ラッチをつけています。防災グッズはふたつ以上を合わせて安全度を上げるのがベターです」と、辻さん。

●収納棚
小物は、滑り止めシートを貼った小物入れに収納

小物はすべて小物入れに収納。さらにケースの裏には、滑り止めシートを張って飛び出さないようにします。寝る前にはすべての小物をしまいます。

●棚の扉
耐震ラッチで揺れによる開閉を防ぐ

ホームセンターなどで、1000円前後で買える耐震ラッチ。ビスなどで家具本体と扉に取り付けると、揺れで扉が開くのを防ぎます。普段の開閉には影響なし。

●本棚
念には念をで、棚や本の転倒防止策を多方面から徹底

本棚には、転倒防止板をかませ、天井までのスペースは、収納ケースで埋めて固定します。さらに、棚には滑り止めシートを敷き、隙間がないようにぎちぎちに詰めるのもポイント。本棚が倒れてくると大量の本の下敷きになって、圧死する危険があります。辞典など重い本は下段に入れることで、本棚自体も安定します。ガラスは、飛散防止フィルムを張れば完璧です。

足もとは、100円ショップなどで売っている、転倒防止板を活用。家具を壁から3㎝ほど離して置き、床と家具の間に転倒防止板をかませます。

地震に強い家づくりのテクニック
<玄関>

避難経路を確保するため、物は置かない

「避難経路となる玄関と廊下には、何も置かないのが鉄則。靴が多いとどれをはいて逃げるのか迷うので、出すとしたら歩きやすいものを一足だけです」。玄関マットは慌てて転倒する原因になるので不要、傘は発災時には凶器になるかもしれないので、収納しておきます。そして、玄関の収納には非常持ち出し袋をスタンバイ。家の中が壊滅状態になっても、玄関なら入れるケースもあるからです。持病の薬やコンタクトレンズなど、生きるために必要なものを入れておくといいでしょう。

玄関と廊下は、避難経路にあたる場所。ものがたくさん出ていると、逃げ遅れの原因になり、命に直結します。

地震に強い家づくりのテクニック
<洗面所・トイレ>

ものが散乱しにくい収納にしておく

洗面所やトイレはこまごまとしたものがありますが、そのまま収納するのではなく、必ず箱に入れます。軽いものなら落ちてもけがはしないかもしれませんが、ものが散乱するだけでも心にあたえるダメージは大きいもの。また、洗剤なども大量のストックはものが増える原因になるので、おすすめしません。また、一昔前は、地震のときにはトイレに避難すると安全といわれていましたが、いまはトイレの柱が必ずしも強くない住宅が増えています。家具のない部屋や玄関に逃げるほうが安心。


地震に強い家づくりのテクニック
<寝室>

ベッド上に落下や転倒がないように物を配置する

無防備になる寝室は、背の高い家具を置かないことが基本。万が一天井が落下したときのことを考えて、強い柱があるほうを頭にして寝ます。ベッドの下にはスニーカーを巾着に入れてスタンバイ。これで、部屋がめちゃくちゃになっても、がれきを踏んでけがをすることなく脱出できます。照明はシーリングタイプにするか、落ちても安心な軽いものに。ペンダントライトは、ベッドの真上ではなく、少し離れたところに吊るして。重いものはNG。


教えてくれた
辻 直美さん profile

阪神・淡路大震災で自宅が全壊したのを機に、災害医療の道へ。国内28件、海外2件の被災地で活動。防災に関する講義も行う。

text:Ema Tanaka illustration:Yumi Miyashita web edit & text:Riho Abe
リンネル2021年10月号より
※画像・イラスト・文章の無断転載はご遠慮ください

連載 #防災

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