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小林聡美さん「大人として自由に生きるためには〝手放す〟ことも必要」後編 小林聡美さん「大人として自由に生きるためには〝手放す〟ことも必要」後編

小林聡美さん

家族や社会のしがらみの中で、人間としての自由を渇望する女性たちの思いと葛藤を描き出した『阿修羅のごとく』。舞台開幕直前、次女を演じる小林聡美さんが、今を生きるひとりとして、観客に伝えたいメッセージとは。

目次
小林聡美さん「大人として自由に生きるためには〝手放す〟ことも必要」後編
  1. インタビュー
  2. 小林聡美さんプロフィール
  3. 出演舞台『阿修羅のごとく』

■小林聡美さんのインタビュー前編「平凡な人の奥底にある激しさを伝えられたら」を読む↗

〝女とはこうしたもの〟に「?」
自由な場所でしか生きられなかった

夫を立て、家族を助け、子どもたちを育てるよき家庭人……昭和の時代、社会からも家庭内でもそうした役割を求められ、葛藤した女性たち。『阿修羅のごとく』は、作劇の面白さもさることながら、そのリアルな心情描写で人々の心を揺り動かしました。舞台の上演に向けて稽古を重ねる小林聡美さんにも、ひとつひとつの台詞に感じるものがあるそうです。

「4姉妹、タイプの異なる女性たちの生々しい思いがさらけ出される部分もあって、あの時代にこうした作品を書いた向田邦子さんは、やはりすごく強い方だったんだろうなと……。とはいえ、『え?』と思う部分もあって、たとえばボクサーの恋人と暮らす末っ子の咲子が減量中の彼に付き合って絶食していることを《女は、それ(自分だけ食事をすること)出来ないのよ。見てないところで食べりゃいいと思うでしょうけど、それも出来ないのよ》とかばうところ。私は『え? できないんだ』って(笑)。そうか、昭和の女はそうなのか……と」

あっけらかんとそう告げる小林さん。こぼれる笑顔に、思わずこちらの頬も緩みます。

「まあ、私はおじさん的価値観で動く場所にはあまり関わらずに生きてこれたので……もちろん、自分だけの力ではなく、それが許される環境で仕事をして生きてこられたことは恵まれていたし、幸運だったんだと思います。そういうところでしか生きられなかった(笑)、という面も含めて」

小林聡美さん

負担を抱え込まず、
心身をなるべく身軽にしておきたい

自分の信じる場所で生きていく――このおおらかさと、自由を諦めない強さこそが、大人に求められるもの。小林さんにその秘訣を尋ねると、うーん、と考え込んだ後、「身軽になっていくこと、かなぁ」と話を続けました。

「何かにとらわれて、『これをしなくちゃいけない』『責任を果たさなくては』という課題を抱え込むと、やっぱり大変ですよね。仕事や家庭の状況によってはどうしてもそれらを求められることもありますが、それでも、なるべく手放せるものは手放して、自分を身軽にしておく……それが、自由でいられるカギなんだと思います」

ちなみに、小林さんが最近手放したものは、“外出の機会”。2年半のコロナ禍で、生活、変わりましたよね。

「皆さんもそうだと思いますが、人と会って外食をしたりする機会が減りまして、とくに夜はほとんど出歩かなくなった。ちょっとサビシイ反面、心も体もすごくラクになりました(笑)。でも、舞台は夜公演があるでしょう? だから、今から緊張しているんです。眠くなったりしないだろうかって」


小林聡美さんプロフィール

こばやし・さとみ/1965年生まれ。東京都出身。俳優として数々の映像作品、舞台に出演し、代表作に映画『かもめ食堂』『めがね』『プール』『紙の月』、ドラマ『やっぱり猫が好き』『すいか』『光とともに…〜自閉症児を抱えて』『ペンションメッツァ』など。最新主演作に映画『ツユクサ』がある。舞台出演は2020年『あなたの目』以来2年ぶり。執筆家としても人気が高く、『聡乃学習』(幻冬舎)など多数の著書がある。

(衣装クレジット)
カバーオール¥39,600/ロドリリオン、パンツ¥22,000/ニードルズ、シューズ¥86,900/ネペンテス×トリッカーズ(すべてネペンテス ウーマン トウキョウ 03-5962-7721)


出演舞台

舞台阿修羅のごとく宣材写真
『阿修羅のごとく』
4姉妹に扮する小泉今日子さん、安藤玉恵さん、夏帆さんとは、第一声を合わせたときから「私たちのために書かれた作品なのでは? というくらいのフィット感」があったとか。演出を務める木野花さん、4姉妹に関わる男性を演じる岩井秀人さん、山崎一さんとともに開幕の時を待つ。2022年9月9日〜10月2日まで東京三軒茶屋・シアタートラムで、10月8日〜10日には兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演。
『阿修羅のごとく』特設サイト

photograph:Futoshi Osako styling:Noriko Fujitani hair & make-up:Ichiki Kita(Permanent) text:Michiko Otani
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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