震災をきっかけに、ものを減らし、人生が好転したというapartment301さん。40代ひとり暮らし女性のワンルームライフの体験をもとに、実感を伴った変化のようすを紹介した書籍『捨て活で見つけた「私」が主役のワンルームライフ』が発売。今回は、暮らしや生き方を見つめ直すきっかけとなった“捨て活”についてくわしくお話を伺いました。
普通の部屋でも変われるかもしれないという希望を持ってもらいたい
「よく“もったいないから捨てられない”というけれど、ものでぎゅうぎゅうに詰まっているほうが、私は“もったいない”って思っちゃうんです」。すっきりとしたワンルームライフがSNSで話題となり、このたび初の著書を上梓したapartment301さん。「部屋も心も同じくスペースがあるから、新しい何かが入ってくる。でもそこを埋め尽くしていると、何かが入ってくるタイミングだったかもしれないのに、それを全部逃してしまう。そっちのほうがもったいないですよね」
過去の思い出をとっておくのではなく、未来の自分のためにスペースをあけておくこと。「過去は過去でしかない。私たちは今を生きていて、その先に未来が待っているのだから、後悔しないように」
どこか神がかった表情で、するすると説得力のある言葉を紡き出す。そんな彼女も7年半前までは「ものでぎゅうぎゅうに詰まった」部屋で暮らしていました。変わったきっかけは、熊本地震。「しまってたものが全部落ちてきて、足の踏み場がない部屋というのは、こういうことをいうんだなって」。ちゃんと片付けていたつもりだったけれど、それは見えないように隠していただけ。そのことに気づいてから、自然な流れで始めたのが「捨て活」でした。不要なものを捨てるという意味では「断捨離」にも通じますが、重きをおくのは“身軽に生きる思考”というより、“何を捨て、何を残すか”。また誰でも気軽に始められるところもポイントだそう。
「本当に、自分にもできるんじゃないかって思ってもらいたい。実際、私が住んでいるところも、そんなに家賃が高いわけでもないし、デザイナーズでも高級マンションでもない。普通の部屋でも、こんなふうに変われるかもしれない、という希望を持ってもらいたいんですよね」
書かれているのは、捨て活の経緯と極意、愛用しているものや習慣など。しかしそれらを決して真似してほしいわけではないと言います。「ここは私にとってのベストなものが残ったけれど、他の誰かにとってはきっと違う何かが残るはずで、ひとりひとり違うのは当たり前」だからこそ伝えたいのは「自分の正解は何か」を探す努力をすること。「その人の大好きなものがあれば、それは残して全力で楽しめばいいし、あんまり好きじゃないけれど、仕方なく持っているものは、バッサリ切り捨てる。そういう部屋を作ったら、その人にとってオリジナルな、最高の空間ができるんじゃないのかなって」
私にもできる。そんな気持ちを鼓舞してくれるのでした。
新著『捨て活で見つけた「私」が主役のワンルームライフ』
「捨て活」によってものを減らし、新たに手に入れた価値観で人生が好転した、40代ひとり暮らし女性のワンルームライフ。体験をもとに、実感を伴った変化のようすを、ふんだんなビジュアルとノウハウを交えながら紹介。震災をきっかけに、部屋も心も徐々に塗り変わっていく過程は、見応えも読み応えもあり。グッとくるフレーズに出合えることうけあい!
お話を伺ったのは……apartment301さん
PROFILE
熊本県在住。ごく普通の賃貸物件の301号室に暮らす。家賃は水道代込みで3万3000円。 熊本地震をきっかけとした「捨て活」後の愛用品や、片付けのハウツーを綴ったInstagramが大人気。食品の販売員を経て、現在はお片付けアドバイスの活動をスタート。
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photograph & text:BOOKLUCK
リンネル2023年12月号より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください
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