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会社員から作家へ転身。木工作家・吉川和人さんのものづくり 【コウケンテツのヒトワザ巡り・番外編】 会社員から作家へ転身。木工作家・吉川和人さんのものづくり 【コウケンテツのヒトワザ巡り・番外編】

コウケンテツ
吉川 和人
連載 #コウケンテツのヒトワザ巡り

「リンネル」本誌で好評連載中の「コウケンテツのヒトワザ巡り」は、料理家のコウケンテツさんが、器や調理道具の作り手のもとを訪ね、ものづくりへの思いを聞くというもの。第3回では、木の特性を活かした作品が人気の木工作家・吉川和人さんの工房を訪ねました。ここでは、誌面に書ききれなかった吉川さんの創作の背景を、さらに詳しく探ります。

目次
会社員から作家へ転身。木工作家・吉川和人さんのものづくり 【コウケンテツのヒトワザ巡り・番外編】
  1. 36歳で会社を辞め、岐阜県の木工学校へ
  2. 一度きりの人生。好きなことに挑戦しよう
  3. 木が「生き物だった証」を活かす
  4. 思いどおりにならないからこそ、面白い
  5. 吉川さんの作品が購入できるイベントも開催決定

【吉川和人さん】

1976年生まれ。大学卒業後、カッシーナ・イクスシーに入社。2012年に退社し、岐阜県立森林文化アカデミーで木工技術を学ぶ。卒業後は木工作家として東京と三重の工房で制作活動を行う。

インスタグラム @kazutoyoshikawa

 

 

【コウケンテツさん】

料理研究家。旬の素材を活かした韓国料理をはじめ幅広いレパートリーを気軽に作れるレシピが人気。雑誌をはじめ、テレビ、SNSYouTubeなど多方面で活躍中。

インスタグラム @kohkentetsu

YouTube @kohkentetsukitchen

 

36歳で会社を辞め、岐阜県の木工学校へ

吉川さんの代表作でもある木のスプーン。ざっくりと形を取ったあと、手作業でスプーンの形になるよう削っていく。口に触れたときの心地よさも意識したうえで、形や素材を決めていくそう

吉川和人さんが工房を構えるのは、東京郊外にある静かな住宅地。木の香りが漂う工房には、これから家具や器へと生まれ変わる、多様な木材がところせましと並んでいます。

吉川さんが木工作家として独立したのは、今から9年前。36歳にして勤めていた会社を辞め、作家を目指して木工学校へ入学する……という思い切ったチャレンジでした。

「大学ではマーケティングを学んでいましたが、卒業後はもともと好きだった美術やデザインと関わりたくて、イタリアの家具メーカー・カッシーナへ入社しました。最初の8年間は法人営業を担当していましたが、企画へ異動になって、展示会の企画や買い付けを担当するようになったんです。そうすると、職人さんとのやり取りも増えてきて。入社当時はデザインの周辺で生きられればいいと考えていたけど、『やっぱり自分も作る側になりたい』という気持ちが強くなっていったんです」

大きく入った「節」を活かした大皿。節の位置も計算しつつ、デザインを決めていくそう。「木工はあくまでも素材ありき。僕は形を添えるだけだと思っています」と吉川さん

一度きりの人生。好きなことに挑戦しよう

作家へと転身する決定的な契機となったのが、2011年の東日本大震災でした。

「僕は福島出身なのですが、そろそろ会社を辞めようかな……と思っていた頃に震災が起きて。こんなに予想もしないような出来事が起こるのなら、一度きりの人生だし、好きなことをやろうと決意したんです。それで会社を辞め、岐阜県にある木工学校へ入りました。ただ、子どももいるし、家のローンもあったし、まわりからはすごく心配されました(笑)」

木に入った黒い筋のような模様はバクテリアの痕跡。そうした個性的な素材を使うのも、吉川さんの作品の特徴です

当時は吉川さんいわく、「かなり追い込まれた状況」。少しでも早く作家として独り立ちできるように、在学中から毎月東京に帰り、作品を持って営業に回っていたそう。

「スプーンの授業があったら、そこで作ったものを持って売り込みに行って。その際はカッシーナ時代の経験が役立ちました。当時は売り込みを受ける立場だったので、企画の部署がどんなものを求めているかなんとなく分かっていた気がします。幸運なことに出会いにも恵まれ、在学中に取引先が決まって、卒業から半年で個展を開くことができました」

固くきめ細やかな楓をはじめ、樫や桜などさまざまな木で作られたスプーンとバターナイフ。スプーンのカーブも食べやすいように浅くデザインされています

木が「生き物だった証」を活かす

数ある「ものづくり」の分野のなかでも木に惹かれたのは、子ども時代の体験が原点にあるから。

「僕は子どもの頃から近所の森で遊んでいたので、木はすごく身近な素材。それに、陶芸やガラスは窯や設備が必要だけど、木はナイフさえあれば作れるんですよね。そこにも面白さを感じていました。小学生のときには、実家のクルミの木の枝を彫刻刀で彫って、スプーンを作りました。切ったばかりの枝はまだ柔らかいので、小学生にも彫ることができたんでしょうね」

木の中でも、特に節(ふし)や割れ、ゆがみ、模様……など、木が本来持っている特性を活かしているのも、吉川さんの作品の特徴です。

「昔は『無節』という節のない素材の方がグレードは高く、林業家の人も無節の素材を作るためにいろんな努力と工夫をされて、日本の伝統としてすばらしい技術を積み上げてきました。でも節というのはそもそも、木が生長するときに光に向かって枝を伸ばそうとした痕跡。いわば木が生き物だった証なので、それを排除してしまうのはもったいない。節の周辺は木の密度も高くて、香りも強いんですよね。素材の持つ生命力みたいなものに、僕も無意識に惹かれているのかもしれません」

幼い頃に作ったスプーン。「母にプレゼントしたのですが、使われずにしまわれていて。おそらく僕の初めての作品なので、今でも大事に取ってあります」

思いどおりにならないからこそ、面白い

「基本的に作品づくりというのは、自分がイメージしたデザインを素材に反映させていくのが王道だと思うんです。でも木の場合、どうしても形は材料の素性を超えられない場合も多いと思っていて、もともとの模様を活かすようなデザインを考えたり、そもそもゆがみむことを前提に設計したり……。材料に従って自分を調整していくのが、ぼくのスタイルだと思っています」

吉川さんのユニークな経歴にも刺激を受けたというコウさん。「会社員としての経験も、すべて作るものに活かされている。やっぱり作品には、その人の生き方が表れるものですね」(コウさん)

吉川さんの作品が購入できるイベントも開催決定

2022年10月に開催し、好評を博した「コウケンテツのこれええで展」。今年10月には待望の第2回を開催します。本企画で取材した吉川さんのスッカラをはじめ、コウさんの愛する器や調理道具を販売。ぜひチェックしてくださいね。

「梨の木でスッカラを作ってほしい」というコウさんのリクエストに応えて、その場でデザインを考える吉川さん。木製スッカラは「コウケンテツのこれええで展2」で販売予定です

【コウケンテツのこれええで展2】
場所:阪神梅田本店7F イベントウエスト
日時:10月4日(水)〜17日(火) ※最終日は午後6時まで
※イベント詳細は随時公式インスタグラムにて公開していきます。
インスタグラム @hanshin_ls_event

>> 吉川さんの木製スッカラに合わせて作ったコウさんの「スッカラとサーモンとズッキーニのスープ」レシピをチェック!

>> 【コウケンテツのヒトワザ巡り&レシピ】の記事をもっと見る↗

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photograph : Akira Yamaguchi text :Hanae Kudo
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料理研究家

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1974年、大阪府生まれ。30か国以上を旅した経験を活かし、旬の素材を活かした手軽な家庭料理を提案。プライベートでは3児の父。

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