CULTURE
:中村倫也さん「文章は音色。自分らしいフレーズを大切にしたい」/新刊『THE やんごとなき雑炊』インタビュー
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:実力派俳優として活躍中の中村倫也さんが、初の料理本『THE やんごとなき雑炊』を出版しました。タイトル通り、レシピはなんとすべて“雑炊”。斬新かつユニーク、目にも舌にも心にも美味な本書は必読です。その制作過程のエピソードや執筆にあたっての思いを伺いました。
中村倫也さん「文章は音色。自分らしいフレーズを大切にしたい」/新刊『THE やんごとなき雑炊』インタビュー
“雑炊×雑談×俳優”の組み合わせがおもしろい
━━『THE やんごとなき雑炊』は1年半にわたる雑誌連載をまとめたもので、中村倫也さんが“雑炊”を作りながら“雑談”し、その料理の過程からイマジネーションしたショートエッセイを執筆しています。2021年に発表した初のエッセイ集『THE やんごとなき雑談』に続く著書ですが、2冊のタイトルが酷似。これはまさかの……。
「そうそう、面白いかなと思ってダジャレっぽくしました(笑)。“雑”までは一緒にしたかったので、雑で始まる2つの文字を探しました。普段から料理をするので、“雑炊”を作るのが仕事になったら楽しいかなと。考えてみれば、雑炊やおじや、リゾットの違いがよくわからないし、“雑に炊くもの”くらいのイメージだったんです。厳密にはお米を入れるタイミングなどの定義はありますが、具材とかには縛りがないし。自由に発展させて遊べそうだったのでテーマに選びました」
━━中村さんが料理本!?と意外に感じるかもしれませんが、実は料理好きとしても知られる方。ひとり暮らしを始めた20代前半に自炊を始めたことをきっかけに、料理をするようになったのだとか。本書はフードコーディネーターのタカハシユキさんが監修者として参加されており、学びが多かったといいます。
「最初の頃は知らないことが多かったのでレシピや調理方法などを調べて、いろんな料理を作っていました。そのうち、ベースになる味付けが何種類かあるとわかってからは応用がきくように。もともと生真面目に正しく作るタイプではなくて、細かい処理や面倒なところは適当なんです。だけど、切り方や手順には理由があって、なぜそうなっているかを理解してやってみると、口当たりや味が変わるんですよね。この連載を経て、パスタを作るときにはオイルでニンニクを炒めた後に、一度取り出すようになりました」

あえてレシピ通りに作らない「ただの俺」シリーズ
━━全20個のレシピのなかで、中村さん本来の自由な料理スタイルを披露しているのが『ただの俺』シリーズ。先生の指導を受けずに一人で作ったもので、お手本とは全く違う出来上がりが楽しくて興味をそそられます。さらに、最後の一つは書籍撮り下ろしで、中村さん自身が考えた雑炊レシピを紹介。
「『ただの俺』は、先生のレシピのまんま作ったら意味がないじゃないですか。だから、テーマだけ見て、後は食材を選んで自分流にアレンジしました。罠のように関係ない食材も置いてあるから、本当に自由に好きなように(笑)。先回りしてゴマをするすり鉢を出されても、『いらん、いらん』ってね。頭の中でイメージした味になるから自分としてはおいしいんですが、本音をいえば、自分の枠を超えてないから学びが少ないし、タイトルをつけるのも難しかったですね」
━━料理のプロセスと雑談がクロスオーバーする誌面からは中村さんのお茶目な一面や遊び心が垣間見え、俳優業のときとはまた違う顔を見せています。ショートエッセイは料理を手掛かりに、自身のルーツを振り返ったり、日常の出来事に思いを寄せたりと、生き方や日々の生活の思考にも触れられるのが魅力です。
「ショートエッセイでは食べた雑炊にまつわるものや頭にポンと浮かんだものを書いていたんですが、『ただの俺』のときはそれも難しくて。料理が俺流な分、いろいろなことを引っ張ってきて頑張って書きました。後半は、ささやかに深く掘ったようなことも書いているんですけど、僕の中ではメインはあくまでも雑炊で、エッセイは主張しすぎないお供のようなものかな」

“ふざける”くらいがちょうどいい
━━目を見張るのが、自由で独特な言葉のセンス。料理名ひとつとっても『中国の、田舎町の、怖い先輩雑炊』『紫式部の蹴鞠飯』など、とてもユニークで想像を掻き立てられます。文章を書き始めたのはブログだったそうですが、書くことも学びの一つだといいます。
「アウトプットの一つの表現として面白がりながら、ブログを書き始めたのが最初です。もし、文章を書くセンスがあるのなら、そこを伸ばせば何かの役に立つかなと学びを期待して始めたんです。前作のエッセイ集のときにも言葉選びが独特だといわれた記憶があって、普段は書いてないし、あまり読んでないからかな。ただ、俳優が文章を書く意義を考えると、読みやすい文章を書くことよりも、自分のフィルターを通した言葉のほうがいいのかなと。そのときの気分や思いに当てはまった言葉を、整えすぎずにそのまま出している感覚ですね。だから、あえて読みやすくしないことも結構あります。自分にとっては、文章は音色なんですよね」
━━前作でも本作でも時折、自分のことを「ふざけたやつ」と評する中村さん。パブリックイメージからは遠い言葉でもあり、そこにどんな思いが込められているのかを聞いてみました。
「改めて考えたことはないですが、それこそレシピ通りに作らないところにも通じる人生観なのかなと思います。客観的に見たときに、端々で認識することもありますし。なにより、自分自身がふざけている大人が大好きなので、そうなりたいという思いの表れかも。僕はもともと根が真面目なんです。真面目に考えすぎると角が立ったり、つまらないことになったりして、誰もハッピーじゃないんですよね。そこに陥らないためにも、『ふざけている』くらいがちょうどいいのかなと感じています」
新著『THE やんごとなき雑炊』
PROFILE
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[衣装クレジット]ニット¥49,500/SHOOP、シャツ¥44,000、パンツ¥26,400/共にATTACHMENT(全てSakas PR)
photograph: Miho Kakuta syling: Akihito Tokura(holy.) hair & make-up: Ryo Matsuda(Y's C) text: Harumi Yasuda
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