CULTURE
:イザベル ボワノさんのフランスの小さな町で好きなものに囲まれて暮らす豊かな日々
CULTURE
:フランスの西部に位置する小さな町、アングレームに暮らすイラストレーターのイザベル・ボワノさん。豊かな自然に囲まれ、職人や自身が作るものに囲まれた、私たちの憧れが詰まったような暮らしをまとめた本『パリジェンヌの田舎暮らし』(パイ インターナショナル)が話題です。イザベルさんの幼少期の思い出から、心地よく暮らすために大切にしていることなど、お話を伺いました。
イザベル ボワノさんのフランスの小さな町で好きなものに囲まれて暮らす豊かな日々
イザベル・ボワノさん PROFILE

©Ryo Tamura
フランス在住のアーティスト、イラストレーター。雑誌や書籍、雑貨、広告などさまざまな分野で活躍中。著書に『シンプルで心地いいパリの暮らし』(ポプラ社)、『わたしのおやつレシピ』(小学館)、『パリのかんたんお菓子 レシピ&ラッピングペーパーブック』『おとしより パリジェンヌが旅した懐かしい日本』(パイ インターナショナル)などがある。
インスピレーションの源は家族

子どもの頃に出合った本や「サンリオ」の文房具、日本のアニメなどをきっかけに日本が好きになり、大人になってから定期的に日本に訪れていたイザベルさん。小さな頃から、ものづくりをしていたそうです。
「私たちの家族は、村の幼稚園、小学校と村役場を兼ねた建物の2階に住んでいて、1階では3歳から10歳の子どもたちが一緒に学んでいました。両親がこの学校の先生だったんです。私はそこに2歳半から5歳まで行っていて、印刷会社と一緒に活版印刷をしたり、リトルプレスを作ったり、学校の外でフルーツを採ってタルトを作ったり、家具やドールハウスを作ったり。両親が手仕事が好きだったので、私も自然とものづくりが好きになりました。
今も絵を描いたり、本を作ったり、料理をしたり。手を動かすことが心から楽しくて、子どもの頃にしていたおままごとが、そのままサイズが大きくなっただけのよう(笑)。3、4歳の頃から、楽しみ方があまり変わっていないんです。祖母も洋裁の仕事をしていたので、針仕事も好き。家族が私のインスピレーションの源になっています」
自然を愛する職人を訪ねて

アングレームの近くに暮らす両親の家に行くと、庭で昼食をとるのが楽しみだそう。
20年ほど、パリに暮らしていたイザベルさん。現在はパリを離れ、フランスの西部の町アングレームに暮らしています。自然豊かな地元で出会った、優れた職人たちを紹介したのがこの『パリジェンヌの田舎暮らし』です。
「この本では毛糸やかご、器など、さまざまな自然の素材を扱う職人の仕事を紹介しています。例えば、かご職人のフランソワさんは、素材となるセイヨウコリヤナギを自分で育てるところからものづくりをしていますが、彼のように素材から作品まで、使うものをすべて作っている職人を見つけたいなと思っていて、そういう人が作った美しいものが、私にとってお気に入りのものになっています」

「自然や環境を尊重する生き方をしている人が好きで、その生き方を共有することが私にとって大切です。何かを買うとき、工場で大量生産されたものにお金を払うことが正しいのかどうかを考えていきたいと思っています。だからこの本で紹介する職人や工房を選ぶ際にも、その人たちが自然を愛しているかどうかが重要でした」
お気に入りの見つけ方と楽しみ方

ピクニックには、かごにお気に入りの道具を詰め込んで。
日本でもフランスでも、蚤の市に行くことが好きだというイザベルさん。たくさんのものの中から、特別なものを見つけるのは早いのだとか。
「蚤の市に行くときは、何が欲しいかなどは特に考えてはいませんが、いつもおもしろいと思えるものに出合えます。アンティークのものや手作りのものと出合うときは、例えば道を歩いているときに犬と目が合って、“仲良くなれそう!”と思う感覚に似ています(笑)。これが私の家にやってきたら、きっと私にいいインスピレーションを与えてくれると確信するんです。
かごや陶器などの美しいものを見ると、すぐに“素敵、欲しいな”と思います。でもそれと同時に、それを持つ必要性や買ったあとにどうするかを考えます。手仕事が好きですが、買ったその日から私の人生が終わるまで、家の中で一緒に過ごせるか、壊さずに持っていることができるか、毎日楽しむことができるかも大切。私とその“もの”が、新しい友達になれるかどうかをたくさん考えるようにしています」

本棚をはじめとする家具の多くは、日曜大工が得意なお父さんの手作り。
古いものや手仕事のものなど、さまざまなものが好きで、たくさんコレクションしているそう。
「私の夢は古い薬局にあるような、床から天井まである大きなショーケースの家具に、すべてのお気に入りのものや本を置いて、いつでも見られるようにすること。でも今のアパートは賃貸なので、多くのものを箱に入れていて、それをどのように分類するべきかは、私にとっていつも大きな問題です。
日本で買ったものは同じ箱にまとめていますが、ときどき同じ色のものだけを集めて分類しようとすることも。そういうことを時間をかけてするのはとてもおもしろく、やっているうちに考えが変わったり、魅力を再発見することもあります。コレクションをすることは、私の人生の楽しみの一つ。パンデミックで家から出られなかったときも、私は小さな家族のように感じるお気に入りのものや、旅の思い出に囲まれて幸せでした」

フランスや日本などの蚤の市で集めたオブジェは、お父さんの作ったショーケースに並べて。
心地のいい暮らしをするために

料理もイザベルさんにとってはものづくりの一つ。本にはレシピもたくさん掲載。
古い絵に描かれているような、美しい木のテーブルや椅子、食べ物など、暮らしにまつわるもの全てに、一番興味があるというイザベルさん。
「快適な暮らしをするために心がけているのは、自分の周りに美しいものだけを置くことと、食べるものもいいものを選ぶこと。蚤の市に行くのと似た感覚でマルシェに行き、チーズや野菜、果物を買うのが好き。そこで人がどう働いていて、どんな哲学があるかというのが大切なんです。野菜を使って料理をするときも、その野菜から物語を感じます。生産者や自然の恵みに感謝して、できる限り自分の環境や周りの人にリスペクトを感じ、いい哲学を持っている人、環境に配慮する人からものを買いたいですね。ものや人、もちろん自分自身も大事にして、いいもの、いい食事を心がけたいと思っています。
日本の皆さんにも、できる限り自分自身の人生を楽しんで、よくないことがあったとしても、小さなことで幸せになれることを忘れないでほしいです。自然の中にある小さな動物や植物を観察したり、幸せを感じる可能性は、きっとどこにでもあると思います」

「パリジェンヌの田舎暮らし」シーズン1、2(2021年、2022年放送)に登場した8人の職人の仕事をあらためて紹介しながら、それらをイザベルさんがどんなふうに日々の暮らしに取り入れているかを詳しく綴ります。番組内で紹介した料理のレシピや、雑貨の作り方なども掲載。
text & edit & translation:Mayumi Akagi
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