溝端淳平さん「初心に返ることが、一番のモチベーションに」/舞台「カラカラ天気と五人の紳士」インタビュー 溝端淳平さん「初心に返ることが、一番のモチベーションに」/舞台「カラカラ天気と五人の紳士」インタビュー
映像作品のみならず、舞台にも力を入れ、俳優としての幅を広げてきた溝端淳平さん。この春に挑むのは、劇作家・別役実さんの不条理劇の世界。稽古場の様子や手ごたえなど、稽古真っ最中ならではの、生の声をお届けします。
「俳優としての経験や感覚が、根底からリセットされるような感覚」。
━━現在、取り組んでいる舞台「カラカラ天気と五人の紳士」の稽古について、そう話してくれた溝端淳平さん。作品は懸賞で棺桶を当てた5人の紳士と、女性2人のやり取りを描いた別役実さんの不条理劇。演出を手がけるのは、舞台からドラマ、映画までボーダレスに活躍する気鋭の演出家・加藤拓也さんです。インタビューの日は、約1週間の本読みを経て、本稽古へと入ったタイミング。まずは本読みの感想から尋ねてみると……。
「今回の作品はメタファー的な要素が多く、解釈の仕方が本当に人それぞれ。役名も紳士1、紳士2、女1、女2…と書かれているだけですし、はっきりとした起承転結もない。この台詞はどんな意図で書かれているのか、ギャグなのか、それとも深い意味が込められた比喩表現なのか……? みんなで意見を出し合いながらこの戯曲の謎を解いていくような本読みでした。そのときの自分の感情や体調によっても捉え方が変わってくるし、読むたびに新しい発見があります」
━━溝端淳平さんとともに5人の紳士を演じるのは、堤真一さん、野間口徹さん、小手伸也さん、藤井隆さん……というベテラン勢。演技巧者たちによる掛け合いも楽しみなところですが、意外にも稽古場では「正解が分からず、雲を掴むよう」と苦戦している様子。
「正直、このメンバーですから、面白くすることはできるんです。僕も稽古が始まる前は、先輩からたくさん盗もう、自分も負けてられないぞ……と意気込んでいましたし。でも今は、その面白さを取っ払おうとしている段階。観る人に伝わるようにと分かりやすく表現したり、コントっぽい動きをすると、『それはやめてください』『何もしないでください』と加藤さんに言われてしまう。僕は蜷川幸雄さんをはじめ、厳しい演出で知られる方ともご一緒してきましたが、ある意味、今まででいちばん厳しいかもしれないですね。表現って何だろう? 自分って何だろう? と突きつけられる感じです」
━━「わかりやすく」「面白く」という、俳優としてはごく当たり前の感覚を取り払い、フラットに作品と向き合う。そうした経験を経て、「俳優として新しいフェーズに入れそうな気がする」という手ごたえも。
「『こうしたら面白くなる』というテクニック的なものをすべて取っ払って、『いかにその場に存在するか』という基礎に立ち返ることができるのは、非常に大きい経験になると思いますね」
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